『私たちのブルース』が描いた「ダメ男としっかり女」の物語が妙に納得できた理由は?

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2022年に制作された韓国ドラマの中で、「人生ドラマ」のジャンルで最高傑作と称されたのが『私たちのブルース』であった。内容は、済州島(チェジュド)に住む人々の日常をドキュメンタリータッチで描いたオムニバス形式のドラマだった。

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たくさんのエピソードの中で特に人気が高かったのが「チェ・ハンスとチョン・ウニの物語」である。ハンス(チャ・スンウォン)とウニ(イ・ジョンウン)はともに40代後半という年齢設定だ。

2人は高校の同級生で共に貧しい生活の中から自分で頑張って人生を切り開いてきた。その中で、ハンスが銀行の支店長として故郷の済州島に赴任するところから物語は始まる。

彼は娘をアメリカにゴルフ留学させているのだが、そのために大変な経費がかかって借金ばかりしている。その娘も才能を伸ばせず、もはやアメリカでの留学が難しい状況なのだが、ハンスは意地でも続けさせたいと思い、さらなる借金をしようとしている。その相手先と考えたのが、同級生のウニであった。

ウニは高校の時からハンスに惚れていた。そのことをハンスもよく知っており、今や海産物店の社長として経済的にも豊かになったウニのことを狙っていた。

画像=tvN

地方の生活を生々しく描いたドラマ

ウニはドラマの中でどの物語にも必ず顔を出す「一番の主人公」と言ってもいい存在で、『私たちのブルース』を骨太く支えていた。案の定、ハンスに対しても精一杯に尽くそうとする。図式としては「ダメ男としっかり女の初恋物語」という雰囲気だった。

結局、ハンスはウニの恋心を利用するために、修学旅行で行った思い出の木浦(モッポ)へウニを連れ出していく。そういう目論見(もくろみ)に対して同級生の仲間たちが腹立たしい思いで見つめていた。そのことをウニもわかっていた。それでもあえて彼女はハンスをなんとしても助けたいと考えていたのだ。このあたりが本当に泣ける場面だった。

それにしても、「ダメ男としっかり女」というのは韓国社会の縮図の一つだ。財閥の御曹司が華々しく活躍する韓国ドラマはとても多いのだが、その一方で、地方の生活を生々しく描いたドラマは少ない。『私たちのブルース』は、韓国社会があまり描かない地方の実態を如実に見せてくれたという意味でも、大変意義深いドラマであった。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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