朝鮮王朝時代、王宮にはたくさんの女性が住んでいた。その中で一番身分が高いのは、もちろん王族である。
大妃(テビ/国王の母)がいれば、女性の中で最高峰となる。もし大妃が亡くなっていなければ、王妃が一番の女性となる。
そのほかに、王女などが最高ランクに位置づけられる。王族以外で身分が高い女性には品階が与えられる。品階のトップは正一品で、品階の最後は従八品である。
このように品階は8つに分かれ、「正」と「従」があるので合計で18段階となる。
品階の上位を見ていくと、正一品から従四品までは側室に与えられる。側室になったばかりならば従四品となるし、国王の王子を産めばほとんど正一品となる。
このように側室が正一品から従四品まで占めた後、正五品から以下は女官に与えられる。つまり正五品は女官の中のトップであり、尚宮(サングン)と呼ばれる。
『宮廷女官 チャングムの誓い』に出てきたハン尚宮というのも、身分から言えば女官のトップクラスである。その部下たちは、女官の経験や働きによって従八品まで品階を与えられる。
女官の見習いであれば、一人前になって品階をもらえるまで経験を積み重ねていくことになる。以上のように、女官はいわばエリートなのである。力仕事などはやらない。
それを補うために、王宮では実際に雑用をする女性も多かった。彼女たちは「ムスリ」と呼ばれた。
ムスリたちはたとえば、水汲みとか品物の積み下ろしなどを行なう。当時は水汲みが大変な重労働だったので、王宮にはムスリのように力仕事や雑用を行なう人がたくさん必要だった。多くは、最下層の身分の奴婢だった。
ドラマ『トンイ』では、トンイも子供のときに下働きから仕事を始めている。
このドラマの主人公は歴史上のモデルが淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)というが、彼女も水汲みをするムスリだったという説が有力だ。そんな身分から最後は側室になったと言い伝えられている。
つまり、王宮の下働きは身分の低い女性が担ったが、国王の側室になってやがては国王の母になることも可能だったのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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