12月12日から韓国で放送されるtvNの『哲仁王后』が興味深い。
ドラマは、現代を生きる青瓦台(大統領官邸)のシェフであるチャン・ボンファンの魂が、朝鮮王朝時代の王妃キム・ソヨンの身体に宿ってしまうというコミカルなフュージョン時代劇だ。
このキム・ソヨンは歴史的に哲仁(チョリン)王后のことで、ドラマのタイトルになっており、シン・ヘソンが華麗に演じている。
このシン・ヘソンは今やトップ級の女優の1 人であり、『哲仁王后』は放送が始まったら大変な話題になるだろう。
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また、シン・ヘソンが演じる王妃の夫となる哲宗(チョルジョン)の役は、キム・ジョンヒョンが演じている。この役は難しそうだ。なにしろ、哲宗はこれまでも時代劇であまり取り上げられたことがなかった。
とはいえ、哲宗は歴史的にも謎めいた存在であり、工夫次第でドラマをとても面白くできるだろう。
そんな注目の哲宗は、どういう王だったのか。
彼が歴史に登場したのは1849年だ。
その年に24代王の憲宗(ホンジョン)が22歳で急死したが、憲宗には息子がいなかった。王室の最長老となっていた純元(スヌォン)王后(憲宗の祖母)は、元範(ウォンボム)という18歳の青年を後継ぎに指名した。
これは、仰天すべき人事だった。元範は地方の江華島(カンファド)に住んでいたからだ。しかも、王族とはいえ農業でその日暮らしをするのが精一杯で、まともな学問を受けていなかった。そんな青年が、純元王后によって突然王に指名されたのだ。
しかし、絶対的な権力を握る純元王后に誰も逆らえなかった。こうして、元範は急に田舎から呼び出されて25代王の哲宗(チョルジョン)になった。
無学の男が王になって、何かができるわけではない。それこそが純元王后の狙いだった。彼女は自分の一族で王宮の権力を独占するために、あえで「操り人形」にできる元範を王に仕立てあげたのだ。
こうして、純元王后は政権中枢を押さえ、朝鮮王朝を完全に手中におさめた。そんな中で、哲宗はわがままで奔放な国王人生を送って1863年に32歳で亡くなってしまった。
そんな哲宗が新しいドラマの『哲仁王后』では、どのように生き返ってくるのか。彼のキャラクターの描き方がとても楽しみだ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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