韓国時代劇『華政(ファジョン)』のヒロインとなっていた貞明公主(チョンミョンコンジュ)は女優のイ・ヨニが美しく演じていた。そんな貞明公主は、「朝鮮王朝の王女の中で最も大きな土地を所有した」と称されている。つまり「とてつもなく大地主だった王女」というわけで、大富豪だったのである。
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しかし、傲慢な女性ではなかった。それどころか、天使のような心を持っていた。彼女は、韓国でも有名なエピソードが語り継がれている。それは、1636年に朝鮮王朝が強大な清に攻められたときの逸話だ。
そのとき、清が都の漢陽(ハニャン)に攻めてくる前に貞明公主は江華島(カンファド)に避難するのだが、その際の彼女の行動が語り草になっている。
具体的に、起こった出来事を見てみよう。
当時、多くの民衆が我先に都から逃げだして船着場までやってきた。その中に、江華島に向かっていた貞明公主もいた。
もう船着場は大混乱に陥った。それを見た貞明公主は、臣下たちに対し厳命を下した。
「我が所有する一切を船から取り外し、途方に暮れる民衆を一人でも多く船へと導きなさい!」
この突然の命令に、臣下たちは顔色を失い躊躇した。船に積まれていた品々は、その価値が計り知れず、決して軽々と手放すものではなかったからだ。
だが、貞明公主は迷わなかった。彼女は不動の決意で臣下たちに告げた。
「我の身の安全は二の次だ。民の救済こそが最優先である」
結局、船からは貴重な荷物が下ろされ、救いを求める多くの人々が船へと乗せられた。これは王族とはいえ容易なことではなかった。その結果として貞明公主は多くの命を救ったのである。
命の恩人となった貞明公主に対し、民衆からは絶賛の声が上がった。
「私たちが命を繋ぐことができたのも、貞明公主様の高潔な人柄のおかげです」
この言葉が口から口へと伝わり、貞明公主の名は歴史の中に深く刻まれた。
このようなエピソードを知って『華政(ファジョン)』を見ていくと、物語の深みが更に際立ち、一層の愛着が得られるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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