歴史背景を知ればドラマが10倍面白くなる『于氏王后』の世界

2025年07月13日 歴史 #于氏王后 #U-NEXT #写真
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チョン・ジョンソとチ・チャンウクが主演している『于氏王后(うしおうこう)』は、2世紀後半の高句麗(コグリョ)を舞台にしている。当時の時代背景がわかると、ドラマの内容を的確に把握できるようになるので、高句麗の歴史と人物について解説していこう。

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今から2000年以上も前の紀元前の頃、朝鮮半島北部から中国東北部にかけて、多くの部族が領地を持っていた。特に強大だったのが扶余(プヨ)で、その中から現れた英雄が朱蒙(チュモン)である。彼が高句麗を紀元前37年に建国して初代王となり、卓越した能力で国の基盤を作った。

朱蒙は紀元前19年に亡くなったが、2代王・琉璃王(ユリワン/在位 前19~18年)が都を鴨緑江(アムノッカン)中流の国内城(クンネソン)に移転させた。以後、後継の国王たちが領土を拡大し、勢力をどんどん強めていった。

そして、179年に高句麗の9代王として即位したのが ナンム(男武)であった。『于氏王后』ではチ・チャンウクが演じている。

チ・チャクウクが演じたナンム王© TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.

彼の父は新大王(シンデワン/在位165~179年)であり、ナンムは二男だった。長男は素行が悪くて国王にふさわしくないので、二男にも関わらずナンムが選ばれて新大王の後継者となった。『于氏王后』でも新大王の長男は第1王子コ・ペウィ(ソン・ジェリムが演じていた)として登場し、廃された皇太子という設定になっていた。それは史実とまったく同じだった。

即位したナンムは、堂々たる体格だった。朝鮮半島最古の歴史書『三国史記』では「国王は長身で風采が良く、大きな鼎(かなえ)を持ち上げるほど強かった」と書かれている。さらに同書では「事に臨んではよく聞いて判断し、寛容と勇猛を併せ持っていた」と評されている。こうした記述を読むと、ナンムは間違いなく名君である。『于氏王后』でチ・チャンウクが演じたのも、まさにピッタリだったと言える。

また、『三国史記』ではナンムが180年に「于氏一族で有力だった于素(ウ・ソ)の娘を王妃にした」と記されている。ここで明確に「于氏」の名前が出てくる。王妃が「于氏」であったことが歴史的に証明された。

ただし、それ以外には王妃の記述が一切ない。それゆえ、彼女の実像がまったくわからない。『于氏王后』ではチョン・ジョンソが王妃ウ・ヒを演じており、理知的でありながら燃える闘志を持った女性として描かれているが、それは史実に基づいた話ではないようだ。しかし、史実にない部分を補うのもドラマの役割であり、『于氏王后』における王妃ウ・ヒの存在感は古代の浪漫に通じるものがあった。

チョン・ジョンソが演じたウ・ヒ(© TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.)

次に、王妃ウ・ヒの姉のウ・スン(チョン・ユミ)について見てみよう。彼女は『于氏王后』で物語を大きく動かすキーパーソンになっていた。

なにしろ、男を虜にする媚薬をナンムが飲む飲料水の中に混ぜてしまい彼が急死する原因を作ったのだから。そういう細工をしたのは、自分が国王から寵愛を受けたいという意志の表れであり、その欲望が悲劇を生んでしまった。

チョン・ユミが演じたウ・スン(© TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.)

しかし、歴史書ではウ・スンのことは触れられていないので実在を確認できない。ドラマでの彼女は架空の設定だと思われるが、いかにも存在していたかのような抜群の個性を見せていた。

一方、『于氏王后』ではナンムが急死した後に国の舵取りを担った宰相のウル・パソ(キム・ムヨル)が不気味だった。有能な男ではあったが、いずれ反逆する雰囲気を漂わせていた。

キム・ムヨルが演じたウル・パソ(© TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.)

このウル・バソは『三国史記』の中で乙巴素として登場する。彼は「性格が剛健で知慮が深い」と高く評価されており、重臣の推薦によって宰相に就き、正しい政治を行って国内を安定させたという。

このように、史実で乙巴素はナンムを補佐する最高級の重臣になっていたが、それは『于氏王后』でも同じだった。ただし、それだけで終わらないのが人間の裏も描くドラマの醍醐味だ。表現力が巧みな俳優キム・ムヨルが演じたウル・バソは、歴史書に書かれていない部分でもドラマに不穏な空気を運んでいた。

さらに、『于氏王后』で一番残虐な人物だった第3王子のコ・バルギ(イ・スヒョク)は、歴史書でその実在を確認できなかった。とはいえ、ドラマでは物語全体を支配する稀有なキャラになっており、実在を超えるインパクトを持った登場人物であったことは間違いない。

イ・スヒョクが演じたコ・バルギ(© TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.)

史実でも善政を行っていたナンムであるが、『三国史記』によると197年5月に世を去っている。死因についての記述はない。ただし、遺体は故国川原(コグッチョンウォン)に埋葬され、諡(おくりな/亡くなったあとの号)は故国川となっている。

以上のように『于氏王后』の歴史的な部分を解説したが、このドラマでは史実をベースにしながら大胆な歴史解釈を加えている。そして、国王急死によって起こった熾烈な後継者争いを壮大なスケールで描いていた。同時に、アクションシーンと息詰まる心理戦を織り込んだ歴史巨編になっていた。

なお、『于氏王后』は、NBCユニバーサル・エンターテイメントよりDVD-SETおよびレンタルDVDとして全話一挙リリースされており、7月1日からはU-NEXTにて独占先行配信も始まる。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

◆作品情報

『于氏王后(うしおうこう)』
DVD-SET 発売中 16,940円
※DVD全8巻レンタル中
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
U-NEXTにて7月1日(火)全話一挙独占先行配信開始
(c)TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.

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