テレビ大阪で放送されている韓国時代劇『華政(ファジョン)』。ドラマはいよいよ佳境に入ってきて、6月11日(木)の第54話は、朝鮮王朝が強大な清に攻められる場面が描かれる。
このとき、主人公の貞明公主(チョンミョンコンジュ)は江華島(カンファド)に避難するのだが、史実では当の貞明公主の有名なエピソードが記録に残っている。
それは、どんな話なのだろうか。
実は清が都の漢陽(ハニャン)を攻めたとき、多くの民衆が我先に逃げだした。貞明公主も江華島に避難しようとしたが、かなりの数の民衆が船着場までやってきた。
もう船着場は大混乱に陥った。
それを見た貞明公主はお付きの者に命令した。
「荷物を全部下ろして、できるだけ多くの民を船に乗せなさい!」
即座にそう言われても、お付きの者たちは躊躇(ちゅうちょ)した。船に積んでいたのは、あまりに高価なものばかりだったからだ。
しかし、貞明公主に迷いはなかった。彼女は毅然として言った。
「私はどうなってもいいから、みんなを助けなさい」
結局、船から荷物を下ろさせ、できるだけ多くの人たちを船に乗せたのであった。
王族とはいえ、これはなかなかできることではない。おかげで、貞明公主は多くの人を助けたのである。
命を救われた民衆たちは、貞明公主を称賛した。
「さすがに名高い貞明公主様です」「素晴らしいお方のおかげで助かりました」
この話が語り草になり、貞明公主の名は歴史上でとても有名になった。
こうしたエピソードを知って『華政(ファジョン)』を改めて見ると、物語の面白さが際立ってくる。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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