ドラマ『華政(ファジョン)』の主人公の貞明公主(チョンミョンコンジュ)の結婚式は、反乱の最中であったために質素に行なわれたが、実際の歴史では結婚式が盛大だった。ドラマと史実はまったく違ったのだ。
そこで、結婚式での有名なエピソードを紹介しよう。
朝鮮王朝時代、国王が乗る馬のことを「御乗馬(オスンマ)」と呼んだ。
唯一無二の特別な馬である。
この御乗馬が町に出たとき、たとえ王が乗っていなくても、民衆は御乗馬に向かって頭を下げて礼を示さなければならなかった。
それほど重要な御乗馬を、なんと仁穆(インモク)王后は娘の貞明公主の結婚式に使ったのである。
当時の上流階級の結婚式では、新郎が馬に乗って新婦の家に駆けつける習慣があった。当然ながら、貞明公主の夫が馬に乗って王宮に出向いていくわけだが、仁穆王后の命令で、その馬に御乗馬が割り当てられた。
しかし、あとで大問題になった。
「不敬罪だ」
「処罰せよ」
このように重臣たちが批判した。
そのとき、16代王の仁祖(インジョ)はどういう態度を取ったのか。彼は、仁穆王后の独断を不問に付した。
仁祖とて、勝手に御乗馬を使われて面白いはずがなかったが、やはり、大妃(王の母)であった仁穆王后に気兼ねしたのだ。ましてや彼女は、仁祖がクーデターを起こして光海君(クァンヘグン)を王宮から追放するときの功労者であった。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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