まずは史実から話を進めていこう。1694年３月29日、下級官僚の金寅(キム・イン)が出した告発書には「張希載(チャン・ヒジェ)が淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)を毒殺しようとした」と記載されていた。これによって宮中は大騒動になった。
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つまり、粛宗(スクチョン)が寵愛する淑嬪・崔氏が毒殺されそうになったのである。しかも、犯人は張禧嬪(チャン・ヒビン)の兄の張希載だという。明らかに張禧嬪が黒幕だと目された。
結局、張禧嬪は王妃から側室に降格となり、空位となった王妃の座には、先に廃位となっていた仁顕(イニョン)王后がカムバックすることになった。まさに仰天人事であった。
それでも、仁顕王后の復位は多くの高官たちが歓迎した。彼女には人望があったからだ。
1694年４月12日、粛宗は正式に仁顕王后を王妃に迎えた。
「最初は悪い臣下たちにそそのかされて間違って処分してしまったが、ようやく本当のことを悟った。昔の縁を再び結ぼうとしたのだが、国家に関わることを処置するのは簡単ではない。ようやく凶悪な者たちを処分することができたので、王妃をこうして迎えられる」
このように粛宗は語って、仁顕王后を再び王妃に戻すことを心から喜んだ。
以上が正史の『朝鮮王朝実録』に載っている史実だ。
そういう事実は『トンイ』ではどのように扱われただろうか。ドラマでは第38話で仁顕王后の復位が描かれていた。それは以下の通りだ。
正装した仁顕王后が質素な小屋から出てきた。彼女は廃妃になったときに罪人として白いチョゴリで実家に帰ってきたが、今度は華やかな大行列で王宮に戻ってきた。
凱旋する仁顕王后を喜んで出迎えたのが粛宗だ。うれし泣きする仁顕王后の手を握って粛宗が優しくこう語った。
「余を許してくれ。こんなひどい目にあわせてしまった余を……」
「私を信じてお守りくださったのは、まさに殿下でいらっしゃいました」
仁顕王后の言葉が温かい。粛宗は仁顕王后の目を見つめて感激に身を震わせていた。
その後、仁顕王后はトンイ(ハン・ヒョジュ)と再会した。2人は手を取り合って心から喜んでいた。
このように仁顕王后の復位は『トンイ』でも本当に感動的に描かれていた。それにしても、仁顕王后に扮したパク・ハソンは品位のある演技でとても好評を博していた。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
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