ソウルは朝鮮王朝の王都である。市の中心部には、朝鮮王朝の古宮が残り、ソウルやその周辺には、王陵がある。
しかし、古代においては百済の都であったこともあり、漢江(ハンガン)の流域に広がる土地は、百済、高句麗を中心に、新羅を含めた古代三国の角逐の場でもあった。
【サク読み韓国史】高句麗、百済、新羅がしのぎを削り合った三国時代
そんな古代三国、とりわけ高句麗と百済の戦いの跡を残すのが、漢江の北側、ソウル東部で、九里(クリ)市との境付近にある峨嵯(アチャ)山だ。
この山の麓には、昔から韓国に行っている人にはカジノで、韓流ファンにはドラマ「ホテリア」のロケ地として知られるシェラトンウォーカーヒルホテルがある。
峨嵯山には、ソウル市側と九里市側とから登ることができるが、私はソウル市側から登った。ソウル市側からは、地下鉄7号線の龍馬(ヨンマ)山駅で降りて、峨嵯山と峰続き龍馬山から登る手もあるが、私は地下鉄5号線の峨嵯山駅で降りて、タクシーでワンメーターの所にある登山口に向かった。
峨嵯山は標高が300メートル弱と手ごろなことから、平日にもかかわらず、かなり多くの登山客がいた。最初は登山道もかなり広く、登山と言うよりも、森林浴といった感じで、空気が心地よい。
登山道のあちらこちらに、湧き水の取水口がある。韓国ではこうした山から出る湧き水を「薬水(ヤクス)」と言い、非常に人気がある。韓国人は登山が大好きであるが、薬水を持ち帰ることを目的としている人も多く、ポリバケツや大きめのペットボトルを持って山に行く人の姿をよく見かける。
ただ峨嵯山が古代の戦場であったことを考えると、この山の水は、兵士たちにとっては命の水であったに違いない。
登山道は次第に文字通りの山道になっていった。そして、山頂を目指す道と峨嵯山城(もともとは阿且山城と書いた)に行く道とに分かれた。私は一旦、山城の方に向かった。
しばらく歩きと、木々に覆われはっきりとは見えないが、石積みが見えてきた。当地に立てられた案内板を見ると、この辺りからも、土器や瓦など、高句麗式の遺物が発掘されている。この山城は、もともとは百済が築いたが、高句麗に奪われたのであった。
文・写真=大島 裕史
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