朝鮮王朝では厳しい身分制度が維持された。身分が違うと、着る服装から食卓のおかずの数まで違っていた。その朝鮮王朝時代の身分制度がどれほど厳しかったのだろうか。
王族は身分制度を超越する存在であったので別格と考えれば、朝鮮王朝時代の身分制度の最上位は両班(ヤンバン)であった。
両班は、先祖から恩恵を受けて生まれた人たちで、大地主の貴族階級と考えればわかりやすい。
ただし、高い官職は科挙に合格しなければ得られないので、両班の家に生まれたといっても安泰ではない。両班の子弟は、小さい頃から猛勉強を義務づけられていたのだ。そういう傾向が、現代韓国の学歴社会に結びついている。
518年間という長寿を誇った朝鮮王朝は、亡霊のように現代韓国に様々な影響を及ぼしている。
朝鮮王朝の身分制度の中で、両班の下になるのが中人(チュンイン)である。専門的な能力を持った人たちのことだ。
医者や通訳などの技術官、両班を補佐して実務を取り仕切った下級役人、両班から格下げとなった庶子やその子孫などが中人となっていた。
身分制度の三番目が常民(サンミン)である。庶民のことであり、日本の江戸時代の「士農工商」でいえば「農工商」にあたる。つまり、多くは農民、職人、商人だった。
この人たちも科挙を受験することはできたが、実際には教育を受ける機会がなく、事実上、官僚として出世することはほぼ不可能だった。
また、常民は人口では一番多いのだが、韓国時代劇にはあまり出てこない。そのことは、韓国時代劇で庶民を描いた作品がいかに少ないかを端的に示している。
四番目は、身分制度の最下層に位置する賎民(チョンミン)である。
奴婢、芸人、妓生、巫女などが該当する。奴婢の場合は、父母のうちでどちらかが奴婢であると、子供も奴婢となった。また、一度その籍に入ってしまうと抜け出すことができず、売買・相続・贈与の対象となってしまった。
つまり、ドラマ『トンイ』の主人公であるトンイはもっとも身分が低い最下層出身だったのだ。
構成=大地 康
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