時代劇『ヘチ 王座への道』は朝鮮王朝時代の権力闘争がテーマになっているので、国王、王族、高官、官僚たちが王宮を舞台に火花を散らす場面がとても多い。そんな登場人物の中で異色の存在になっているのが、パク・フンが扮しているタルムンである。
この男は本当に謎めいている。
見た目は市場に出入りしているゴロツキなのだが、中身は凄い男で大変な情報通だ。しかも、配下の連中を使って世論を動かす力を持っている。それゆえ、老論派の重鎮であったミン・ジノンも、うまくタルムンを操ろうとしたのだ。味方にすれば頼りになるし、敵にすれば手ごわいからだった。
そんなタルムンは、金で動く男ではなかった。むしろ、情にあつくて仲間のために一肌脱げる快男児だった。それゆえ、民のための政治をめざしていたヨニングン(チョン・イル)とも意気投合して、タルムンはヨニングンを信頼して加勢したのであった。
そんなタルムンには、過去に苦い思い出があった。それは、愛する人を自分の不甲斐なさで見送らなければならなかったことだ。
その女性は出世欲が強すぎて、タルムンの元を去って強力な後ろ盾のところに行ってしまった。それが、なんと密豊君(ミルプングン)に近づいたユニョンだった。ペ・ジョンファが妖しい雰囲気で演じている。
ユニョンの最大の野望は、密豊君を国王にして自分が王妃になることだ。そのためには、強力な協力者が必要だ。そして、白羽の矢を立てたのが、再会したタルムンだった。
タルムンのほうは、ユニョンが言うことが無理難題であることがわかっているので、大いに悩む。まだユニョンに対して強い未練があったからだ。
果たして、タルムンはどういう決断をするのか。
いつものように男気のある生き方を貫けるのか。
あるいは、未練がある女性の願いを叶えようとするのか。
タルムンにとって、一世一代の決断が迫ってくる。『ヘチ 王座への道』は後半に入って本当に面白い展開になってきた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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