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日本映画『国宝』、韓国人はどう見たか?観客が強く反応したポイントとは

2025年12月03日 コラム #田名部知子
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日本映画『国宝』が11月19日に韓国で公開された。

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日本では観客動員数が1231万人、興行収入173.7億円を突破し、22年ぶりに邦画実写の歴代1位となり、アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表にも選ばれた。

日本固有の文化である歌舞伎を題材に、血筋と才能に揺れる二人の男が人生を懸けて芸の道に挑む本作は、はたして韓国ではどのように受け止められているのかーー。

韓国における『国宝』への期待感

『スポーツ東亜』によると、公開11日目の11月29日時点で観客数は10万人を超え、『ウィキッド』などのハリウッド大作が並ぶ中で、『国宝』は座席数が少ないにもかかわらず、トップ5に入る検討を見せている。174分という長尺にもかかわらず、「映画館で見る価値がある」という口コミが増え、若年層にも広がっているのが特徴だ。

韓国で日本の実写映画が大きく話題になることは多くない。これまでヒットした日本の作品は、『劇場版~鬼滅の刃・無限城編』(2025年)、『すずめの戸締まり』(2022年)のようなアニメ作品が中心で、実写映画のヒットは、『Love Letter』(1995年)、『呪怨』(2000年)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022年)などだが、いずれも広く国民的に盛り上がったわけではなかった。

韓国の観客が強く反応したポイント

平日午後の新村(シンチョン)の映画館には、意外にも20代が多かった。鑑賞後に話を聞いてみると、「世襲制に興味が湧いた」
「映像美が圧倒的」「役者の名前がコロコロ変わって、ついていくのが大変だった」といった答えが返ってきた。動機としては「日本で記録的なヒットと聞いたから」という意見が多く、韓国の若者の日本のエンタメニュースへの関心の高さがうかがえる。

『国宝』韓国ポスター

SNS上では、「美しい男同士の嫉妬や挫折、愛などすべての要素が入っている」「手に入らないものがあるからこそ、初めて気づける景色があると気づかされた」「李相日(イ・サンイル)監督でなければ生まれなかった作品」「劇場全体が空気を読んで、誰もポップコーンを食べていなかったのが驚き」といった声などがあり、本作と真剣に向き合う様子が感じられた。

一方で、「映像は美しいが、物語は予定調和」「心理描写をくどくど語らないのはいいが、観客の想像に丸投げされ過ぎている」
といった辛口の声も出ている。

特に議論が集中しているのが、高畑充希演じる春江の描写で、心理の変化や損切りの瞬間があまりに一瞬で、観客の多くが消化不良を起こしているようだ。森七菜が演じた彰子の「死んだ魚のような目」に注目する声や、歌舞伎の世界における女性の位置づけへの違和感を指摘する声も多かった。

韓国の映画専門誌『Cine21』の批評家レビューでも平均6.8点と高評価を得ており、「競争を扱いながらも、善悪の図式に回収しない視線が新鮮」「血と名前の世界の試練を乗り越えた者だけが見る風景」といった評価が目立つ。

『国宝』韓国ポスター

李相日監督が韓国人に伝えたかったこと

9月21日に行われた第30回釜山国際映画祭の会見で李相日監督は、本作での「血筋」と「よそ者」という構造が、自身の在日コリアン三世としての境遇と重なることを認めつつ、「作品との直接的な関係は観客に委ねたい」と語った。会見では質疑が途切れず、登壇者の最後のあいさつが割愛されたほど韓国での関心の高さを象徴した。

韓国社会でも「家」「血統」「序列」という価値観は依然として根強い。その点で『国宝』は大いに共感を生む可能性がある。日本人であっても一度で理解しきれない作品なので、韓国人にも何度もリピートしてほしいし、時間をかけてゆっくり広がってほしいと願う。

(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)

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