時代劇『トンイ』は中盤に入って大きなヤマ場を迎える。仁顕(イニョン)王后(演者パク・ハソン)が粛宗(スクチョン/演者チ・ジニ)の命令によって廃妃になってしまうのだ。トンイ(演者ハン・ヒョジュ)は本当に無念だった。悲しくて仕方がなかった。その一方で、張禧嬪(チャン・ヒビン)は王妃になれるチャンスを得て喜びを隠しきれない様子だ。
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歴史書は、仁顕王后が王妃から降格した日のことをどのように記しているだろうか。18世紀序盤に書かれた『仁顕王后伝』は、仁顕王后が廃妃になった1689年4月21日について詳しく書いている。
王命を受けた仁顕王后は、自ら礼服を脱ぎ、かんざしを取り、すぐに王宮を去ろうとした。粛宗は見送りもせず、冷たい態度を取り続けた。
仁顕王后が昌徳宮(チャンドックン)を出ようとすると、王妃の降格を聞いた大勢の庶民が号泣しながら待ち構えていた。さらに、実家に帰っていく王妃に対して、たくさんの人たちが男女の区別なく通りを埋めて嘆き悲しんでいた。それほど彼女はみんなから慕われていたのだ。
仁顕王后が安国洞(アングットン)の家に着くと、彼女の母親が待っていた。すると、仁顕王后は「罪人の身で親族と過ごすわけにはいきません。お帰りください」と言ったので、母親もやむなく家を離れた。
仁顕王后は門を封鎖し、母屋ではなく奥の離れに住もうとした。側近を1人も置かず3人の宮女だけが従っていた。それも、規則を破ってついてきたのだが、仁顕王后は「どうしてあなた方を使うことができますでしょうか。お帰りなさい」と言った。すると、3人は涙を流しながら申し上げた。
「どうして離れることができましょうか。ぜひ王妃様のそばで死にたいのです」
そこまで言われたので、仁顕王后は宮女たちを温かく迎え入れた。廃妃になったとはいえ、仁顕王后は質素に誠実に暮らした。そんな彼女に対して、宮女たちも真心で仕えた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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