時代劇『善徳女王』は、韓国MBCで2009年に放送された作品であり、16年の時を経た今でも大傑作と評価されている。
ヒロインを熱演したイ・ヨウォン、妖艶で謎めいたミシルを演じたコ・ヒョンジョン、そして、快男児ピダムを体現したキム・ナムギル――主要キャストたちの競演がドラマを鮮烈に彩り、韓国で最高視聴率43.6%という驚異的な記録を叩き出した。まさに「怪物時代劇」と呼ぶにふさわしい作品であった。
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そんな『善徳女王』の主人公である善徳(ソンドク)女王は、史実においても非常に興味深い人物であった。彼女が新羅(シルラ)の王位に就いたのは632年のことであり、その時代、朝鮮半島は三国時代の真っただ中にあった。
新羅は、広大な領土を有する高句麗(コグリョ)や百済(ペクチェ)と熾烈な争いを繰り広げていたが、実力的には明らかに劣勢に立たされていた。
新羅がこの逆境を打破するために目を向けたのが、中国を支配していた唐の力であった。善徳女王はすぐさま使者を唐へ送り、同盟や支援を求めた。しかし、返ってきた唐の反応はあまりに冷淡であった。
「お宅の国は女を国王にしているから、他国に侮(あなど)られているのではないか。我が国の王族を派遣するから国王にしたらどうか。そうしたら協力してあげよう」
この屈辱的な言葉を突きつけられた善徳女王は、深い苦悩の中で決断を下した。彼女は毅然とした態度で唐の申し出を断り、自国の誇りを守ったのである。
その後、善徳女王は未来を担う若手人材を積極的に登用し、内政の充実と国力の強化に力を注いだ。彼女の先見性と行動力は見事に実を結び、彼女の死後、新羅はついに長年の悲願であった朝鮮半島の統一を成し遂げたのである。
この史実は、ひとりの女性の強さと知恵が、国の運命を大きく変えたという歴史の奇跡を雄弁に物語っている。そして、ドラマ『善徳女王』が今なお多くの人々の心を揺さぶり続けるのも、この歴史的な真実が紡ぎ出す力強い逸話があるおかげだ。
文=大地 康
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