チョン・イルとクォン・ユリが魅力的な主人公カップルを演じている『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』は、時代劇としても重厚な歴史を描いている。
特に、光海君(クァンヘグン)の統治をめぐって高官たちが派閥闘争の渦中に入ってドラマを大きく動かしていく。
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その派閥の中心に位置しているのが、重鎮俳優のイ・ジェヨンが演じているイ・イチョム(李爾瞻)であった。
彼の動きを知るために、当時の派閥闘争について解説しよう。
光海君の父親である14代王・宣祖(ソンジョ)の統治時代は、最大派閥の北人派が強力だったが、その北人派は宣祖の後継者をめぐって大北派と小北派に分裂してしまった。
その際、大北派が支持したのが光海君であり、小北派は光海君の異母弟だった永昌大君(ヨンチャンデグン)を支えた。
そして、1608年に宣祖が亡くなった後に15代王として即位したのは光海君だった。
一方の永昌大君は流罪になった末に1614年に殺されてしまった。こうして光海君の統治時代に朝鮮王朝は大北派の天下となった。
この大北派の大物高官がイ・イチョムだ。
彼は絶大な影響力を誇示し、光海君もイ・イチョムの意向を無視しては政策を実行することが難しかった。そのあたりの光海君とイ・イチョムの駆け引きは、『ポッサム』でもひんぱんに描かれていた。
さらに、歴史的にイ・イチョムは光海君を支えた女官キム・ゲシ(金介屎)とも同盟関係を築いていた。
結局、光海君、イ・イチョム、キム・ゲシの3人が当時の政治を大きく動かしていたと言える。
『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』の中でチョン・イルが演じるバウは一介の庶民として描かれているが、物語も後半に入ると、実はキム・ジェナム(金悌男)の孫のキム・デソクであったことが明らかになってくる。
歴史的にキム・ジェナムは永昌大君の母方の祖父であり、謀反の疑いで1613年に殺されている。そんな大事件の重要人物まで登場して、ドラマは非常に重厚な歴史劇になっていく。
このように、朝鮮王朝の17世紀前半の歴史を知っておくと、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』のストーリーをもっと深く理解することができるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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