ドラマ『七日の王妃』では、イ・ドンゴンが演じる燕山君(ヨンサングン)のキャラクターが強烈だ。
もともと燕山君は、朝鮮王朝にいた27人の国王の中で一番ひどい暴君として有名なのだが、『七日の王妃』では単純なワルとして描かれていない。非常に執念深くて屈折が多い国王になっているのだが、特にイ・ドンゴンが独特な感情表現で燕山君の哀しみと横暴さの両面を複雑に見せてくれる。
彼も史実を詳しく研究していたに違いない。燕山君に対する表現力に十分な説得力があった。
【写真】【悪役となったイケメン】『七日の王妃』で燕山君を演じるイ・ドンゴン
実際、歴史上の燕山君は性格に問題があったのは確かだが、極端に行動が歪んでしまった元凶は、母親の死罪を詳しく知ってしまったことだった。
果たして、それはどんな内容だったのか。
燕山君の母親であった尹氏(ユンシ)は成宗(ソンジョン)の正室であったが、精神錯乱から国王の顔を激しく引っかいてしまって廃妃になった。その後に死罪となり、強制的に毒薬を飲まされて自害に追い込まれた。
それは1482年のことで、燕山君は6歳だった。この年齢では詳しいことを知ることはできない。彼は母の死の真相を知らないまま育った。また、父の成宗も「今後100年は廃妃のことを論じてはならない」と厳しい王命を発していた。
しかし、出世に目がくらんだ狡猾な官僚が亡き母の死罪について燕山君にすべて語り尽くしてしまった。
真実をようやく知った燕山君は号泣し続けたという。そして、母の死罪に賛成した官僚たちを根こそぎ虐殺した。すでに死んでいる人の場合は墓を暴いて刃を向けた。憎悪が恐ろしいほど苛烈だった。
そんな憎悪の相手は、尹氏の次に王妃となった貞顕(チョンヒョン)王后が産んだ晋城大君(チンソンデグン)に向かった。この異母弟が本当に憎かったのだ。
事実、燕山君は晋城大君をイジメ抜いたという。国王にそこまで憎まれて、晋城大君も本当に辛かった。同時に、異母兄に対して敵意を見せるようになった。
こうして確執を持った異母兄弟の2人。その間に入って晋城大君の妻も本当に神経をすり減らしたことだろう。
やがてその女性が端敬(タンギョン)王后になる。王妃でいられたのは、わずか7日に過ぎなかったのだが……。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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