ドラマ『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』を見ていると、チョン・ジュノが演じた光海君(クァンヘグン)とカン・テオが扮した綾陽君(ヌンヤングン)は、とても複雑な関係だった。結局、狡猾な野心家だった綾陽君が政争に疲れた光海君から王位を取り上げてドラマは終わった。
しかし、現実の歴史では、もっと生々しいクーデター劇があった。そのあたりを詳しく説明してみよう。
綾陽君は光海君の甥であったのに、強い恨みを持っていた。それは、愛する弟が謀反の罪で死罪になったからだ。綾陽君はすべて光海君のせいだったと見なし、かならず復讐したいと願って準備を進めた。
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彼はたくさんの同志を集めた。光海君は外交や減税政策で成果を挙げていたが、王位を安定させる際に厳しく処罰された人も多く、かなり恨みを買っていた。そういう人たちを同志に加えて、綾陽君はついにクーデターを決行した。
すでに綾陽君は多くの内通者を王宮の中に忍ばせていた。その内通者が綾陽君の合図とともに動き出し、王宮の主な門を開けた。
このあたりは光海君も迂闊(うかつ)だった。政敵に対して油断していたことが致命傷になったのだ。
王宮に乱入してきたクーデター軍は、王宮を守る護衛軍と対峙した。ここで激しい戦闘が行なわれるはずだったが、実際には護衛軍の抵抗はごくわずかだった。すでに、クーデター軍は用意周到に護衛軍の多くを懐柔していたのである。
観念した光海君は、無駄な抵抗をせずに王宮から逃亡した。わずかの側近だけが後に従った。しかし、逃げる途中で光海君は捕まってしまい、すぐに王宮に連れ戻されてしまった。こうして光海君は王宮の中で囚われの身となった。
意気揚々と綾陽君は雄たけびをあげ、クーデターは成功した。彼は16代王の仁祖(インジョ)になったのである。
一方の光海君は廃位にされて、妻と息子と一緒に江華島(カンファド)に流罪となった。
これが、『ノクドゥ伝~花に降る月明り~』では描かれなかった「その後の歴史」だ。光海君と綾陽君の運命を変えたクーデターが起こったのは1623年3月13日であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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