朝鮮王朝を舞台にした時代劇を見ていると、ほとんどが宮廷劇である。つまり、王宮を中心にして、国王、王妃、高官、女官がフルキャストになって物語を華麗に彩っていくのだ。
中心になる人物は王族や高官なのだが、欠かせないのが女官たちだ。
彼女たちは国王や王妃のそばにピッタリと付き従って、王族の世話をしたり命令どおりに尽力したりしている。
中には、政治的な能力を発揮する女官もいて、高官と結託して王族を恣意的に動かしていったりする。こうなると、女官も「その他大勢」の世話係ではなく、立派な政治勢力である。ときには、側室に取り入って国王に少なからず影響を及ぼす場合もある。それだけに、女官は王宮の中で絶対に無視できない存在だった。
そんな立場にもなりうる女官。人数としては、王宮にどれくらいいたのだろうか。
朝鮮王朝は518年間も続いているので、時代によって王宮にいた女官の人数は違うのだが、女官がもっとも多かった16世紀には1000人は超えていたと言われている。これだけ人数が多いと、王宮の中もさぞかし壮観だったことだろう。
人数が多いと管理も大変である。女官という組織で一番厳格に守られたことは、男女の恋愛禁止である。形のうえで女官は「国王と結婚している」とみなされたので、男性関係は極度に警戒された。仮に男性と肉体関係をもったことが露見すると、問答無用で女官は処刑された。それだけに、仮に男性と肉体関係を持とうとするのは命がけだった。それでも、禁を破る女官は出てきてしまう。男女の恋愛というのは、どうしても止めることができないものなのだ。
それでも、ほとんどの女官は男性との恋愛を戒める。すると、どういうことになるかというと、女性同士の同性愛が増えるのだ。実際、16世紀に女官が多いときも、同性愛の問題が王宮の中での一大問題だったと言われている。
また、世子嬪(セジャピン/世子の妻)の中には、女官との同性愛に陥って離縁させられたという例が何度もあったという。このように、いくら取り締まってもなくならなかったのが同性愛であり、それが人間の性(さが)というものかもしれない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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