韓国時代劇には王宮で働いている女官が本当に多く出てくるが、彼女たちの私生活を描くようなドラマはほとんどない。それによって、彼女たちの生活そのものが謎めいているのだが、恋愛事情はどのようになっていたのか。そのあたりを考えてみたい。
女官は、立場の上では王と婚姻しているとみなされていたので、他の男性と結婚はできなかった。これは、大前提であった。
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もちろん、王宮で働いている官僚や使用人は男性ばかりなので、女官の間では異性に対する興味はとても強かったはずだが、その気持ちを抑えなければ、王宮では生きていけなかった。そういう意味では、女官は身を律するために生活を厳格に制限されてしまったのである。
『宮廷女官 チャングムの誓い』では、イ・ヨンエが演じたチャングムが、チ・ジニが扮するミン・ジョンホに恋心を抱くのだが、現実の王宮では、それは「禁じられた恋」に他ならなかった。それだけに、女官は辛い境遇だった。
さらに言うと、仮に女官が王以外の男性と肉体関係を持てば、王に対して不義を働いたという罪になり、斬首に処された。
まさに、女官が男性と関係を持つのは命がけだった。それでも、愛する人に一途になった女性はいる。その結果として女官が妊娠したときは、出産後100日を経てから処刑された。このあたりも容赦がない。
ところで、なぜ100日の猶予があったのだろうか。
実は、生まれた子供の授乳の時間を考慮されたのだ。そして、100日後には斬首の運命が待っていた。ひどい話だが、身分制度が厳格だった朝鮮王朝では、どうしようもないことであった。
さらに、生まれた子供も奴婢にされる宿命を背負っていた。まさに、悲劇の連鎖であったといえる。
そして、女官と肉体関係を持った男性も、問答無用で打ち首となった。形の上では「王様の女と姦通した」とみなされたのだ。
このように、露顕したら打ち首になるのだが、それでも恋に溺れる男女が王宮にはいつの世もいたのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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