テレビ東京で放送中の『王になった男』を見ていると、国王・王妃・大妃にそれぞれ女官が付いて王族の身の世話をしている。こうした女官が王宮には500 人以上もいたと言われている。
彼女たちの世界は、どのようになっていたのだろうか。
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通常、女官は5 歳くらいのときに見習いとして宮中に入ってくることが多かった。ただし、「先祖に罪人がいる」「病弱である」「身分が卑しい」といった女の子は女官見習いになることは無理だった。
運良く宮中に入ってくると、徹底的な徒弟制度による教育を受けた。そういう下積みを経て、18歳くらいで女官として認められて内人(ネイン)になった。
とはいえ、女官は立場の上では王と婚姻しているとみなされていたので、他の男性との結婚はできなかった。そればかりか、身を律するために生活は厳格に制限された。
仮に、女官が男性と肉体関係を持つと、二人とも打ち首となった。こんな極刑を受けることがわかっているので、王宮で女官に手を出す男はほとんどいなかった。しかし、禁じられた恋に燃える男女が現れるのも世の常。その場合、男も女も露顕したら打ち首を覚悟しなければならないのだから文字通りの命がけだった。
さらに、女官は宮中から出ることはできなかった。ずっと、生活の場は王宮の中だけであった。まだ見習いのうちは、大勢の仲間と生活をともにした。いわば大部屋暮らしである。ようやく内人になると、独立して数人で一部屋を使った。もちろん、男子禁制。女性のみの世界で暮らしているだけに、女官同士で同性愛にふける例も多かったという。度が過ぎると、王宮を追放された。なにごとも、目立ってはいけないのだ。
なお、女官は今で言う国家公務員に該当するので、国から俸禄を受けた。多くの場合、報酬は米や生地などの現物で支給されたが、現金で直接もらうこともあった。王宮の外に出られないので、さしたる使い道はないのだが、女性らしく化粧品を買うことが多かったそうだ。
もちろん、多くの女官にとって最大の野望は王の側室になることだった。
そのためには、自らを美しく見せる必要があるわけで、女官たちは切実な思いで化粧品を買い求めていたことだろう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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