尹元衡(ユン・ウォニョン)といえば、『女人天下』ではイ・ドクファ、『天命』ではキム・ジョンギュン、『オクニョ 運命の女(ひと)』ではチョン・ジュノが演じていた人物だ。
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尹元衡は、元々は取るに足らない人間だった。しかし、自分の力ではなく、姉の権力を利用して成り上がっていった。その姉というのが、朝鮮王朝第11代王・中宗(チュンジョン)の3人目の正室となった文定(ムンジョン)王后だった。
文定王后が中宗の継妃になったのは1517年だった。それまでの尹元衡は、うだつが上がらない男だったが、姉が王妃になった途端に、うまく立ち回って出世街道をひたすら突っ走っていった。そんな尹元衡が絶大な権力を握るようになったのは1545年からだ。
その前年に中宗が世を去り、仁宗(インジョン)が12代王として即位したが、仁宗は即位からわずか8カ月で急死してしまう。文定王后によって毒殺されたと見られている。
その結果、文定王后が産んだ息子が13代王・明宗(ミョンジョン)として即位した。彼はまだ未成年だったので文定王后が代理で政治を仕切った。こうして、弟の尹元衡は文定王后の後ろ楯を得て、政治を一気に牛耳るようになった。
そんな尹元衡が政敵を粛清するために画策した陰謀が、1547年に起こった良才(ヤンジェ)駅壁書事件である。
事件の発端は、都の南にあった良才駅で政権批判の張り紙(壁書)が発見されたことだった。そこには、「上では女王が、下では奸臣が権力を占めているから国が滅びてしまう」ということが書かれてあった。
尹元衡は政敵の仕業であると捏造し、「女王」と名指しされた文定王后の指示をあおぎながら、この張り紙を大問題に仕立てあげた。その結果、尹元衡の政敵はことごとく排除されてしまった。
こうなると、尹元衡の横暴ぶりも限界がなくなる。姉の文定王后が「陰の女帝」として君臨していることを利用して、尹元衡はあまりにひどい賄賂政治を続けた。さらには、鄭蘭貞と共謀して妻を毒殺し、新たに鄭蘭貞を正妻に迎えた。
ただし、尹元衡が権力をつかんだと言っても、それは姉の威光があったからだ。姉の文定王后が1565年に世を去ると、一気に尹元衡は奈落に落ちた。今までの悪行が次々に暴露されたのだ。
処刑されるのを恐れて、尹元衡と鄭蘭貞は逃亡した。地方で息をひそめて暮らしたが、最後は2人とも自決している。あまりに多くの恨みを買いすぎていて、結局は自ら命を絶たざるをえなくなったのだ。
【尹元衡の人物データ】
生没年
?年~1565年
主な登場作品()内は演じている俳優
『女人天下』(イ・ドクファ)
『天命』(キム・ジョンギュン)
『オクニョ 運命の女(ひと)』(チョン・ジュノ)
文=大地 康
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