『トンイ』が生きた朝鮮王朝で儒教はどんな影響があったのか

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テレビ東京で放映中のドラマ『トンイ』は朝鮮王朝時代を描いたドラマだ。当時は儒教が国教として定められていた。

朝鮮王朝以前の高麗王朝では、仏教が国教であったため、仏教寺院は大いに保護され、栄えていた。しかし、朝鮮王朝が成立し、儒教を国教と定めると、仏教は一転して弾圧の対象となり、仏教寺院はすべて町中から追放された。

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その名残として、現代の韓国でも仏教寺院の多くは山の中にひっそりとたたずんでいる。これは、朝鮮王朝時代に寺院が市街地から排除された歴史の痕跡である。それでも当時の民衆の間には仏教信仰が根強く残り、その精神は現在の韓国人の中にも脈々と息づいている。

一方で、儒教が国教となったことで、朝鮮王朝では“孝”がもっとも尊い徳とされた。親孝行のできぬ者は出世の道も閉ざされ、他人からの信頼を得ることも困難であった。そのため、人々は親を敬い、年長者に対する礼を尽くすことを当然のように実践していた。言葉遣いにおいても、敬語の使用が厳格に守られていた。

また、官僚を選抜する科挙制度においては儒教の教義が試験の中心であり、朝鮮半島全土の若者たちが儒教の学習に励んだ。その結果、“儒教以外は学問にあらず”という風潮が生まれ、実用的な学問である実学の研究は顧みられなくなってしまった。

食生活にも変化が見られた。高麗時代には仏教の影響により殺生が禁じられていたため、肉食の習慣が根づかなかった。しかし朝鮮王朝に入り、儒教が国の柱となると、肉食が一般化し、食卓の様子も一変した。この変化は当時の人々の生活様式を大きく変えるものであった。

科挙を受ける人は儒教の勉強に励んだ

儒教により変化した人々の生活様式

ただし、儒教は人間の間に序列を認める思想があるため、朝鮮王朝では男尊女卑の価値観が広く浸透した。女性は社会的活動を著しく制限され、王族や両班(ヤンバン)を除いては学問の機会すら与えられなかった。その結果、大多数の女性は文字を読むことができなかった。

また、朝鮮王朝では“世帯主は男性”と法で定められ、親の財産を相続できるのも男性に限られていた。女性は生涯にわたり、父あるいは夫に従属して生きることを余儀なくされていたのである。

文=大地 康

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