韓国時代劇を見ると、必ずと言っていいほど女官という存在が出てくる。もちろん、現在韓流プレミアで放送中の『トンイ』にも女官は出てくるが、いったい王宮の中でどんな生活をしているのだろうか。
女官は幼い頃に王宮に入ることが多いが、10数年の経験を経て多くは18歳頃に正式に内人に任命された。
とはいえ、幼い頃に王宮に入っても、だれもがずっとそこにいられるわけではない。やはり能力に欠ける者や素行が悪い者は容赦なく追放された。
それでは、能力も性格も良ければ大丈夫か。いや、まだ大きな関門が残っていた。それは、処女性を確認する儀式を通過しなければならないということだった。
女官は国家と結婚した、という意識が強く、王に失礼にならないように処女性を維持するのは当然と考えられていた。
この儀式は、女官が12歳か13歳のときに行なわれた。それは、オウムの血一滴を腕に落とすという方法だった。腕に血がにじんでくれば合格で、血がにじまなければ処女ではないと判断されて、女官を続けることができなかった。
それによって、運が悪く女官をやめさせられた人も多かったことだろう。
女官は一度宮中入りすると、よほどの理由がない限り、王宮から外出することができなかった。
それゆえ、日常生活のすべてが王宮にあった。
内人になるまでの女官は、尚宮の下で生活をともにするのが慣例だった。24時間監視されているような気分で、息が詰まって仕方がなかっただろう。
内人になると師の尚宮から独立して何人かで一部屋を使うことを許された。もちろん、女官の居住区域は男子禁制である。まったくの女性だけの世界。同居する女官同士で、同性愛に陥る人も多かったという。
また、女官たちは官吏であったために、国の俸禄を受けた。
多くの場合は、米や生地などの現物が報酬として支給されたのだが、中には現金で直接もらう人もいた。
このように、官位と担当する業務によって給料を支給される国家公務員であったともいえる。
幼い頃に王宮に入って、そこで一生を送る女官たちにとって、最大の野望はなんといっても王と関係を結ぶことであった。
王に寵愛されるようになれば、望みうる最高の待遇と権力を得ることができる。誰もが王の側室の座を狙ったことだろう。
とはいえ、大勢の女官の中で、王の目に止まる位置まで進み出ることさえ容易ではない。女性だけの世界にもかかわらず、女官が給料のすべてを使って自分を美しく飾ることに執着したのも、ただ王の気を引きたいためである。
しかし、いくら野望が大きくても、実現できた女官はほんのわずかな美女だけだった。そして、外部と遮断されたまま一生を王宮の中で送ってきた女官たちは、年を経て病気になれば王宮から出なければならなかった。
とはいっても、ずっと宮中にいたので外に出たとしても適当な家がなく、身の置き場所がないというのが現実だった。それゆえ、多くの女官が晩年は寂しい一生を送らなければならなかった。
韓国時代劇によく出てくる女官。彼女たちは王宮の中でどの様に仕事しながら暮らしているのか。現在放送中の『トンイ』でも女官の仕事を知ることができるだろう。
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