『イ・サン』というドラマを見ていると、主人公になっている正祖(チョンジョ)が本当にすばらしい名君として描かれている。
これは、史実でも同様だった。彼は国王として成し遂げた業績が傑出していた。まさに、ドラマでイ・ソジンが演じたように、正祖は思慮深く学識が豊富で性格がまっすぐだった。
そんな正祖の政治運営で今も称賛されていることは、優れた人材を公平に登用したということだった。
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正祖は、即位する前から、身分が低いために出世できなかった人たちを数多く見てきた。それは、国家にとっても大変な損失だった。
そこで、正祖は身分制度の弊害をできるだけなくすように尽力し、出世の道を阻まれている人を救済するために、奎章閣(キュジャンガク)という施設を作った。
ここは、本来なら王朝の歴代の資料を保管して整理する図書室であった。
しかし、正祖は奎章閣を大幅に改革して、ここに優れた人材を積極的に集めていった。能力がありながら身分が低いために不遇だった人たちに対して、高い地位を与えて研究に没頭させたのである。
この方針は大成功だった。
王宮の組織は硬直化することが多かったが、奎章閣は柔軟な運営によってみんなが生き生きと働き、宮中の活性化に大いに繋がった。
それによって、人材の育成にも大きな力となった。
さらに正祖は、派閥にとらわれず公平な人事を行ない、党争が起きないように官僚たちをまとめあげた。
このように正祖が進めた政治改革は庶民の生活にまでとても良い影響を及ぼすようになり、開放的な雰囲気が醸成されて、文化が発展した。歴史的にも、正祖の統治時代は文芸がとても盛んであった。
朝鮮王朝は518年間も存続したが、こと文化だけを取り上げたら、正祖が統治した1776年から1800年までがすばらしい作品が一番生み出されている。よって、この時代は「朝鮮王朝のルネッサンス」とも呼ばれた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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