『イ・サン』は傑作時代劇として日本でもよく知られている。主役はイ・ソジンで朝鮮王朝の後期の名君として知られる22代王のイ正祖(チョンジョ)を演じた。イ・サンとは正祖の幼名だ。
イ・サンは世子だった父の思悼世子(サドセジャ)が米びつに閉じ込められて餓死してから、ものすごく苦労した。その様子もドラマの中で克明に描かれていたが、成長してから大成して名君になった。いわば時代劇の『イ・サン』は心地よいほどに典型的なサクセス・ストーリーなのだ。
イ・サンに扮したイ・ソジンがとても良かったが、同じように人気を博したのが、ソンヨンを演じたハン・ジミンだった。
愛くるしい笑顔が日本の男性ファンにも大いに受けて、彼女がファン・ミーティングを日本で開催したときは、韓流イベントに珍しく男性ファンもとても多かった。
そんなハン・ジミンが演じたソンヨンは、ドラマではイ・サンの幼なじみという設定だったが、歴史上でモデルになっていたのが、イ・サンの側室だった宜嬪(ウィビン)・成氏(ソンシ)であった。
イ・サンには4人の側室がいたが、その中の1人が宜嬪・成氏である。
彼女は、イ・サンとの間で文孝(ムニョ)世子という名の王子をもうけた。イ・サンもとても期待していたのだが、わずか5歳で亡くなってしまった。
さらに、宜嬪・成氏は再び妊娠しているときに若くして亡くなったと伝えられている。いわば、悲劇の側室なのである。
ちなみに、イ・サンの正室であったのが孝懿王后(ヒョウィワンフ)だ。ドラマではパク・ウネが演じている。
孝懿王后はとても人格者で、宮中で誰もが尊敬するほど評判が良かった。
ただし、イ・サンとの間で子供を宿すことはできず、1821年に68歳で亡くなった。今でも韓国で「もっとも徳があった王妃」として記憶されている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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