1418年に4代王となった世宗(セジョン)は、朝鮮王朝にいる27人の国王の中で、史上最高の名君と言われている。
確かに、卓越した名君だった。
1450年までの32年間統治したが、その間に、官僚の人事に才能を発揮し、民衆の生活向上に尽力し、科学技術の発達まで主導した。そういう意味では、多方面ですばらしい政治手腕を発揮した。
しかし、それだけでは「史上最高の名君」にはならない。やはり、中でも、1443年に作られた「訓民正音(フンミンジョンウム)」の創製が最大の功績であった。
これは“ハングル”と呼ばれる民族独自の文字のことだ。1446年に公布されて、庶民に広く使われるようになった。
それ以前の朝鮮半島では、普通に使う文字は漢字しかなかった。
これは庶民にはつらかった。なぜなら、漢字は朝鮮半島の発音を正しく表記することが難しく、さらには覚えるのが大変だった。
そのために、漢字を使えるのは一部の特権階級に限られていた。結局、庶民は文字を使うことがほとんどできなかった。
そのことを世宗は不憫に思っていた。そこで、彼が自ら主導して、優秀な学者をたくさん集めて、民衆が気軽に覚えられる文字として訓民正音を新たに作ったのである。
この文字ができたことは本当に大きかった。訓民正音によって自ら文字を使える人が増えて、文化が大いに向上したのである。
この訓民正音は朝鮮王朝の末期に優秀な学者たちがさらに改良して、「ハングル」と呼ばれるようになった。「ハングル」というのは、「ハン(偉大な)」「グル(文字)」という意味である。
今、韓国の小学校には、ほとんど世宗の銅像がある。彼が歴史上で一番尊敬されているのは、訓民正音を創製したからなのだが、それほどこの文字は韓国にとって大きな財産となった。
もし韓国にバングルがなかったなら……。
そう考えれば考えるほど、世宗の偉大さがわかってくる。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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