韓国でよく食べられている食べ物といえば、なんといってもキムチだろう。韓国人にとってキムチは絶対に欠かせない漬物だ。
韓国だけではない。日本をはじめとして多くの国でキムチは人気がある。
そんなキムチは、赤くて辛いという印象が定着しているが、それは昔からそうだったのだろうか。いや、違う。朝鮮王朝の中期のころまでは、キムチは白くて辛くない食べ物だったのだ。
【関連』チャングムが作るキムチは辛くなかった!?撮影の宮廷料理も意外と…
これは本当に意外なことだ。歴史的に見ると、キムチが今のように赤くなったのは18世紀以降と言われている。それ以前のキムチは「野菜を沈める」という意味で沈菜(チムチェ)と呼ばれていた。
なぜ赤くなかったかというと、朝鮮王朝で唐辛子が普及していなかったからだ。それ以前は、肉を保存するのに使っていたのはコショウだった。
とはいえ、コショウは朝鮮半島で栽培することができなかったので、外国から輸入せざるを得なかった。それだけにコショウは高価であって、庶民が使うのは難しかった。その状況を一気に変えたのが唐辛子の普及だった。
こうした唐辛子は、1592年に起きた朝鮮出兵のときに豊臣軍が朝鮮半島に持ち込んだという説がある。
もう1つは、ヨーロッパから朝鮮半島に入ってきたという説もある。
2つの説があるが、どちらが正確であるかは定かではない。
いずれにしても、17世紀に入ってキムチが朝鮮半島で使われるようになり、完全に定着したのは18世紀のことで、今のように赤くて辛いキムチが庶民の食卓にも並ぶようになった。
こうして朝鮮半島で普及したキムチは国民食となった。とても重要なことは、外国から持ち込まれた唐辛子が朝鮮半島の土地にとてもよく合ったということだ。
それゆえ、従来の白菜だけでなく、キュウリやダイコンなどにも唐辛子を使って多種多彩なキムチが誕生するようになった。
朝鮮王朝を舞台にした時代劇を見ても、人々の食卓にキムチが並んでいるのは、『トンイ』などのドラマで描いた19代王・粛宗(スクチョン)のころからだ。
つまり、朝鮮王朝の前期を描いたドラマには赤くて辛いキムチは出てこないのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
【関連】『100日の郎君様』でよくわかる!! 朝鮮王朝時代を生きた庶民の食生活【韓ドラ雑学】
前へ
次へ