「魔性の女」のイメージを変えたハ・ジウォンの『ファン・ジニ』

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ファン・ジニのことは知っていた。16世紀の朝鮮王朝時代に実在したキーセン(妓生)で詩人。劇中でも登場する詩『満月台懐古詩』は、彼女の代表作にして、韓国古典文学を語る上では欠かせぬ名作である。

正確な生年月日も没年月日も定かではないが、“ミョンウォル(明月)”という源名と、“ファン・ジニ”の名を知らぬ韓国人は少ない。

それほどまでに有名な歴史的人物だけに、彼女を題材して過去にも数多くの映画やドラマが作られてきたが、ハ・ジウォン主演の『ファン・ジニ』は過去の作品とは明らかに異なった。

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ハ・ジウォンが演じたファン・ジニ(写真=SPORTS KOREA)

何が違ったのか―。それは主人公ファン・ジニのキャラクターだ。

歴史資料の中の“ファン・ジニ”は数多くの名士たちと恋愛関係にあったとされ、 “恋多き女”と言い伝えられてきた。それゆえに“魔性の女”として描かれることが多かったが、ハ・ジウォンが演じた『ファン・ジニ』は違った。

例えば、芸の道を究めようとする姿。もともとファン・ジニは詩、歌、舞踊、絵画といった伎芸にすぐれた人物だとされてきたが、ドラマでは天才的才能をさらに伸ばし磨こうとする姿がしっかりと描かれた。けなげで清々しいその姿に、勇気づけられた人も多いはずである。

何よりも勇気づけられたのは、恋愛や愛に対して、情熱的で真っ直ぐな姿だろう。男尊女卑が厳しかった時代でありながらも、自分の信念を曲げずに激しく恋をし、自由に生きるその姿は、しなやかで美しく、力強かった。

「現代女性に勇気を与える新しいファン・ジニ像が誕生した」。韓国では『ファン・ジニ』放映当時、そんな評価が続出したが、日本でも、「誰かに依存したり、誰かのせいにするのではなく、自らの人生を生き、時代の価値観にも挑んだその情熱的な生き方に、共感を覚えた視聴者たちも多かったのではないだろうか。

まさに『ファン・ジニ』は韓国と日本の視聴者たちに新しい価値観と女性像を示してくれた韓国時代劇ドラマと言えるだろう。

構成=韓ドラ時代劇.com編集部

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