最近の韓国時代劇を見ていると、19世紀の朝鮮王朝を舞台にしたドラマが何本もある。意外と19世紀の朝鮮王朝がドラマの世界でも注目を集めるようになってきたのだ。
そうであるなら、ぜひ、パク・ボゴムとキム・ユジョンが共演した『雲が描いた月明り』にも大いにスポットが当たってもいい。なぜなら、19世紀の朝鮮王朝を描いたドラマが極端に少ない時期にこのドラマが放送されて大ヒットしたからだ。
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この『雲が描いた月明り』でパク・ボゴムが扮したのは世子のイ・ヨンだが、この主人公は孝明(ヒョミョン)世子がモデルになっていた。
実在の彼は、23代王・純祖(スンジョ)の長男であり、1809年に生まれた。
18歳のときから摂政を行ない、大きな成果をあげて将来を嘱望されたのだが、残念ながら1830年に21歳で亡くなってしまった。
寿命だけはどうしようもないのだが、もし早死にしないでもう少し長生きしていれば、孝明世子は大変な名君になっていたことだろう。それほど統治能力は、ずば抜けていたのだ。
たとえて言えば、孝明世子は祖父によく似ていたと言われる。
その祖父とは、イ・サンこと正祖(チョンジョ)である。孝明世子も祖父のことをよく研究していたようで、彼は正祖をみならった政治をしたかもしれない。それは、身分にかかわらず人材を積極的に登用したことだ。
孝明世子も摂政で人事をまかされたとき、やはり身分の違いにこだわらず有能な人を抜擢している。
本来、人事というのは統治の中でも特に難しいことなのだが、孝明世子はまだ10代で人事をうまくまとめあげている。やはり、人心の掌握術にたけていたのかもしれない。
こうして実績をあげていった孝明世子だが、わずか21歳で急死してしまい、朝鮮王朝の歴史の中に埋もれてしまったが、180年ほど経ってから『雲が描いた月明り』の主人公になってドラマの世界で孝明世子は現代に甦った。
もちろん、彼のことを歴史的によく知る人もいただろうが、やはり大きいのは、『雲が描いた月明り』でパク・ボゴムが演じきったことだ。新進スターが凛々しく孝明世子に扮し、その存在が再び脚光を浴びるようになった。
結局は、早世して国王になれなかった孝明世子の無念さを『雲が描いた月明り』というドラマが少しは補ってくれたのかもしれない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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