“ウェブドラマの女神”“10代のチョン・ジヒョン”は、かつてのシン・イェウンを形容するためによく使われた言葉であった。しかし、今の彼女を1つのイメージで語ることはもはやできない。
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韓国JTBCドラマ『100番の思い出』で演じたソ・ジョンヒを通して、1980年代の淡く切ない青春を見事に呼び覚まし、いまや自分だけの色を確立した、唯一無二の女優へと成長した。
最高視聴率8.1%を記録して幕を下ろした『100番の思い出』は、シン・イェウンの真価をあらためて証明した作品であった。
約1年間ソ・ジョンヒとして生きた日々を、彼女は「とても温かく、多くの感情を経験できて感謝しています」と振り返り、「終わってほしくないほど幸せな時間が多かったです」と語る言葉には、作品への深い愛情がにじんでいた。
ソ・ジョンヒとして生きた1年、「猫が食パンを焼く香り」
シン・イェウンにとって『100番の思い出』は特別な記憶として残ったという。
彼女は「私は瞬間を香りで覚えるタイプなのですが、この作品は温かく記憶に残っています。香りがないのに、陽だまりの中で静かに心が落ち着くような、いわば“猫が食パンを焼いているような香り”がするのです」と詩的な言葉で撮影現場の空気を表現した。
バスの案内係から財閥家の養女、さらにはミスコリア出場者まで。ソ・ジョンヒの波瀾万丈な人生を演じるなかで、シン・イェウンは自ら経験したことのない時代を全身で吸収した。特にミスコリア出場のシーンでは、振り付け練習やウォーキングレッスンまで受け、キャラクターに没頭したという。
彼女は「ソ・ジョンヒは、その時代には存在しないような独特のエネルギーとオーラを放つ人物であってほしいと思いました。当時の空気を再現しつつも、現代的な洗練さを表現するように努めました」と話した。
また、1989年の実際のミスコリア大会で“ジン(眞)”がオ・ヒョンギョン、“ソン(善)”がコ・ヒョンジョンだったことに触れると、シン・イェウンは「ソ・ジョンヒが眞で、コ・ヨンレ(演者キム・ダミ)が善ですね」と機転の利いた答えを返し、笑いを誘った。
こうした深い没入の裏には、共演者との強い信頼関係があった。
特にコ・ヨンレを演じたキム・ダミについて、「演技をしているときにキム・ダミさんの目を見ると、本当にコ・ヨンレに見えました。その瞬間、自然と私はソ・ジョンヒになっていたんです」と語り、「2人の間には、言葉にしなくても通じ合う濃密なテンションがありました。静かで深く、そして少しずつ近づいていきました」と完璧な“ウーマンス(女性同士の絆)”を築いた理由を明かした。
パク・ヨンジンというレッテル? それは重荷ではなく勇気である
シン・イェウンの女優人生において、『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』の若きパク・ヨンジン役は欠かせない存在である。
戦慄を覚えるほどの悪役演技で大衆に強烈な印象を残したこの作品は、彼女にとってプレッシャーになってもおかしくない。しかしシン・イェウンはきっぱりと首を振った。
「重荷や焦りはまったくありません。多くの方々が私のことを“いい俳優”だと褒めてくださいましたし、この作品のおかげで一歩前へ進むことができました。ヨンジンという役から勇気をもらったからこそ、これからさまざまなキャラクターを演じることができるのだと思います。だから、これは負担でもレッテルでもないと感じています」
その言葉どおり、彼女はパク・ヨンジンという強烈な残像を見事に別のキャラクターで塗り替えてみせた。
『100番の思い出』で演じたソ・ジョンヒという不憫な女性に深く共感し、「セリフを口にするだけで涙がこみ上げ、胸が締めつけられるほど、ジョンヒという子の人生は切なかったです」と明かしている。
冷たい悪女から儚い青春へと完璧に変身したその姿は、シン・イェウンという俳優の広大な演技の幅を証明するものであった。
バラエティ出演禁止令? 本当は内向的でも祭りは楽しむ
シン・イェウンのもう1つの魅力は、予測不能なギャップにある。
作品の中では真摯で落ち着いた印象を見せる一方、バラエティ番組でははじける明るさを発揮し、“出演禁止令が出た”という噂まで流れたこともあった。彼女は笑いながらこう語る。
「禁止令なんてありません。いい機会があれば、いつでも出演します」
最近の釜山国際映画祭で披露した“電光掲示板の愛嬌バトル”は、彼女のユーモラスな魅力を象徴する出来事だった。しかし、シン・イェウン自身は「私は本当に内向的なんです。仕事以外はほとんど家にいます」と意外な一面を告白する。
さらに「釜山国際映画祭はお祭りのように楽しむ場所なので、自然とテンションが上がっただけです。バラエティではバラエティらしく、ドラマではドラマらしく、その時々の自分が出るのです」と語る彼女の言葉からは、与えられた場で全力を尽くしながらも、その中で喜びを見つけるプロフェッショナルとしての姿勢と、人間味あふれる魅力がにじみ出ていた。
『100番の思い出』を通じて、シン・イェウンは「友情というものをたくさん学びました」と振り返り、「キム・ダミさんから良いエネルギーをもらったように、私もそんなエネルギーを与えられる俳優になりたいです」と新たな目標を掲げた。
“ウェブドラマの女神”と呼ばれた瑞々しい頃を経て、今や仲間に良い影響を与える成熟した俳優へと成長したシン・イェウン。これから彼女がどんな形で自らの世界をさらに強く、美しく築いていくのか、その明日がますます楽しみである。
(記事提供=OSEN)
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