チャン・グンソクが主演を務めた韓国時代劇『テバク』。このドラマには俳優のチョン・グァンリョルも出演していた。その彼が演じたのが李麟佐(イ・インジャ)という人物である。
歴史上の李麟佐とは誰なのか。
この人物は1728年に反乱を起こしている。21代王・英祖(ヨンジョ)が異母兄の20代王・景宗(キョンジョ)を毒殺したという容疑を高く掲げて、政権転覆をはかったのが李麟佐なのである。
韓国の歴史上でも、大変なクセ者として知られる男を演じるチョン・グァンリョル。どんなふうにチャン・グンソクが演じるテギルとからむのかが現段階で定かでないが、テギルが英祖に対して国家を賭けた一大勝負を仕掛けるというのだから、実際に反乱を起こしている李麟佐が重要な鍵を握っているのは間違いない。
そうであるならば、チョン・グァンリョルのキャスティングは最適だろう。それは彼の俳優キャリアが物語っている。
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1980年、20歳のときにタレント・オーディションに合格して俳優を志すようになったチョン・グァンリョル。しかし、その後の彼はあまり注目されず、いくつかのドラマで端役として出演するだけだった。
そんな中、彼の柔らかなイメージが大衆の目を引くキッカケとなったのが、1999年のドラマ『青春の罠』だった。このドラマでチョン・グァンリョルは、温かな優しさを持つヨンググ役を好演した。
大きな注目を集めると、翌年にはドラマ『ホジュン』の主役に抜擢されて大ヒットに導いている。
最高視聴率60%以上の数字を叩き出したこの作品で、彼は一躍スターダムにのし上がり、この年のMBC演技大賞の大賞も受賞した。
病人を身分差別することなく診るといったストーリーだけなら、これほど大ヒットすることはなかっただろう。『ホジュン』の最大の魅力はまさにどこにでも居そうな人間が変身したという点にある。
若い頃は悪事にも手を染め、酒に溺れ、結婚した後は別の女性にも恋をするといった人間が、やがて偉大な医師になるという意外性が視聴者の共感を呼んだのである。この主人公をチョン・グァンリョルは好演して評価を不動にした。
さらに、2006年には『朱蒙』で強烈なカリスマ性を持つクムワ王に扮した。絶対的な権力を握る王として君臨するが、その内に秘めたものは友と最愛の女性に全てを捧げる犠牲的精神だった。この役もチョン・グァンリョルにピッタリである。
「まだまだやっていきたいことはたくさんあります。私の演技に対する情熱は、とどまることを知りません。これからも様々な役柄を演じて表現していきたいのです」
そう語るチョン・グァンリョル。長い下積みを経験した彼は、泥臭い役にリアリティを持ち込むことが巧みだ。
「死ぬまではなく、死んでからも演じていくことが僕の夢です」
そう語ったこともある。
「死んでからも演じる」というのは、演技に対する強烈な執着を感じる。
なんといっても、演技に対するほとばしる熱情が、チョン・グァンリョルの最大の魅力だ。時代劇『テバク』でも、物語を大きく動かす重要な役を彼らしい個性で演じてくれた。
そんな彼は、2020年に『風と雲と雨』というドラマに出演し、朝鮮王朝26代王・高宗(コジョン)の父親である興宣大院君(フンソンデウォングン)を演じた。今後の彼の活躍に期待したい。
♢チョン・グァンリョル プロフィール
生年月日:1960年2月11日生まれ
身長:173cm
星座:みずがめ座
出身校:秋渓芸術大学校音楽学科
デビュー:1980年TBC公開採用タレント22期
☆主な出演作
『青春の罠』(ドラマ、1999年)
『ホジュン~宮廷医官への道~』(ドラマ、1999年)
『朱蒙』(ドラマ、2006年)
『王と私』(ドラマ、2007年)
『ペク・ドンス』(ドラマ、2011年)
『オクニョ 運命の女』(ドラマ、2016年)
『テバク~運命の瞬間~』(ドラマ、2016年)
『風と雲と雨』(ドラマ、2020年)
文=大地 康
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