時代劇『テバク~運命の瞬間(とき)~』は主役のチャン・グンソクの他に、ヨ・ジング、チェ・ミンス、チョン・グァンリョルという共演陣も多彩な顔ぶれで、本当に面白いドラマだった。
特に感心したのが、物語の時代設定が巧みだったことだ。
なにしろ、朝鮮王朝で一番面白い時代を扱っていた。それは、朝鮮王朝の19代王・粛宗(スクチョン)から21代王・英祖(ヨンジョ)に至る時代である。
とにかく、粛宗は女性関係が派手だったこともあり、王家では正室と側室の間で様々な事件が起きている。その中では特に、「朝鮮王朝随一の悪女」と言われる張禧嬪(チャン・ヒビン)と、ドラマ『トンイ』の主人公になった淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)が有名である。
興味深いのは、チャン・グンソクが演じるテギルとヨ・ジングが扮する英祖が兄弟となっている点だ。英祖は母が淑嬪・崔氏で、生まれたのが1694年だが、その前年にわずか2カ月で早世した兄がいた。
『テバク』では、その兄が実は早世したのではなく捨てられていたのだ、という設定になっている。
結局、捨てられた王子がテギルというイカサマ師になって、やがて国王となった英祖と国家を賭けた大勝負を争うことになる。
その中でも特に興味深いところを抜粋してみよう。『テバク』の第3話が描いていたのは1694年だ。
この年には本当にいろんなことがあった。それは何だろうか?
1694年の春には、粛宗の正室だった張禧嬪が側室に降格している。
もともと、1689年に当時の正室だった仁顕(イニョン)王后が廃妃になったために、側室だった張禧嬪が代わって王妃になったのである。その5年後に、今度は張禧嬪が正室から転落し、再び仁顕王后が王妃に戻っている。
そして、『テバク』第3話では、張禧嬪が淑嬪・崔氏をいじめて大きな甕(かめ)に閉じ込める場面があった。
粛宗の助けがあって淑嬪・崔氏は助かるのだが、歴史的にも張禧嬪が妊娠中の淑嬪・崔氏を甕に閉じ込めたというエピソードが残っている。
その話を『テバク』でも大いに取り入れていたのである。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
前へ
次へ