韓国ドラマで異彩を放つのが、どぎついほどの悪役たちだ。正しい道を歩むヒロインを徹底的にいじめるワルたちであり、視聴者たちに嫌われることで逆に「盛り上げ役」になっている。そんな悪役がたくさん跋扈した時代劇として有名なのが、『オクニョ 運命の女(ひと)』(2016年)であった。
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主役のチン・セヨンはオクニョとして明るい主人公を演じたが、逆な立場で強烈な存在感を放ったのが「3悪人」だ。それは、文定(ムンジョン)王后、尹元衡(ユン・ウォニョン)、鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)であり、それぞれキム・ミスク、チョン・ジュノ、パク・チュミが演じていた。
文定王后は、11代王・中宗(チュンジョン)の第三の正室として歴史の舞台に登場した女性である。だが、その姿は常に黒い影を宿していた。中宗の前妻の子である仁宗(インジョン)を毒で葬り去ったという話は、今も苦々しい記憶として残っている。
彼女が自らの息子・明宗(ミョンジョン)の摂政となってからは、官職が金で売買され、政治は正義を失い、庶民は飢えに苦しみながら命を落としていった。さらに、人事を私的な感情でねじ曲げ、政界を私物化した。まさに悪政の権化といえる。
彼女の弟の尹元衡はどうだったか。彼は、姉の絶大な後ろ盾を得て、権力の座に登り詰めた。そして、自らに異を唱える者を容赦なく排除し、政敵を粛清した。こうして宮廷を恐怖で支配した。
また、虚偽の罪をでっち上げ、無実の者を次々に罪人へと貶めた。朝廷は混乱に包まれ、人々の心には不信と絶望が広がった。誰の目にも彼は、許されざる悪の化身として映っていた。
最後の鄭蘭貞。朝鮮王朝三大悪女のひとりとして、その名は今もなお歴史のなかで冷たい響きを残している。文定王后の命に従い、彼女は政の裏側で悪役を担い続けた。そういう意味でも、本当に罪深きワルであった。
以上の3人は、朝鮮王朝の暗い歴史を作った存在である。3人がもたらした不正と悲劇は、時代の記憶に深い爪痕を刻んだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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