U-NEXTで配信中の韓国ドラマ『初、恋のために』は、初恋という誰もが胸の奥に秘める感情を、母と娘という2つの世代を通して繊細に描き出すヒューマンロマンスである。
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物語は、人生の折り返し地点で思いがけず訪れる新たな出会い、そして心の奥底から湧き上がるときめきをテーマにしており、観る者の記憶に眠る甘酸っぱい感情を鮮やかによみがえらせる。
母と娘、それぞれが抱える秘密や葛藤、新しい愛の形が交錯する展開は、世代を超えて共感を呼び起こすだろう。
本作で逆境にもめげずに数々の困難を乗り越え、人生のすべてを愛する娘イ・ヒョリ(演者チェ・ユンジ)に捧げてきたシングルマザーの現場所長イ・ジアンを演じているのがヨム・ジョンアである。
彼女は、この複雑な感情の層を1つ1つ丁寧にほどき、視線や沈黙、微かな笑みの中にまで心情を滲ませる。時に母としての強さを、時に女性としての脆さを覗かせる演技は、キャラクターを血の通った人間として立ち上がらせる。
特に印象的なのは、娘には決して見せられない揺らぎを、一瞬の表情や息遣いに込める場面だ。その演技は観る者の心に自然に染み込む。
長年のキャリアで培った演技術が、本作のテーマである“静かな情熱”を見事に体現している。
ヨム・ジョンアの経歴は多彩で、1990年代から現代に至るまで、時代劇、現代劇、コメディ、サスペンスとジャンルを問わず活躍してきた。
時代劇『太祖王建』では高麗建国の英雄である王建(ワン・ゴン/演者チェ・スジョン)の第2夫人のトヨンを好演し、『魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~』では星宿庁の大巫女で黒呪術の使い手のホンジュに扮した。
さらに、『SKYキャッスル』でSKYキャッスル住人で専業主婦のハン・ソジンを演じ、現代社会のリアルを突きつける迫力で注目を集めた。
こうした豊かなキャリアの蓄積が、『初、恋のために』の母役に説得力と深みを与えている。
『初、恋のために』のヨム・ジョンアは、ただの母親像に留まらない。人生の半ばを過ぎてもなお、人は新たな愛や夢に出会い、自分を更新できるという希望を観る者にそっと手渡す存在だ。彼女の繊細で力強い演技が、この物語の温度と色合いを決定づけているといっても過言ではない。
文=大地 康
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