韓国時代劇の傑作と称される作品では魅力的な主人公が大いに躍動するのだが、それだけではドラマは成り立たない。やはり主人公と敵対する強烈なカタキ約が必要だ。それが韓国時代劇では悪女なのである。特に、視聴者が憎たらしいと思うほど悪女の存在が際立ってくると、ドラマがますます盛り上がってくる。そこで、「傑作時代劇に登場した究極の悪女」を5人選んでみた。
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第5位/『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』の金介屎
ソン・ソンミが演じていた女官の金介屎(キム・ゲシ)は手段を選ばない悪女で、光海君(クァンヘグン)の王位を安定させるために暗躍していた。そうした黒幕としての動きが『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』でもよく描かれていた。しかし、人間として情がなさすぎた。
たとえば、クォン・ユリが演じるファイン翁主(オンジュ)が生きているのに、「死んでください」と露骨に言い放つ女性だった。その一言がファイン翁主をどれだけ悲しませたことか。ドラマの中で金介屎は本当に利己的な悪女だった。
第4位/『イ・サン』の貞純王后
21代王・英祖(ヨンジョ)の二番目の正室であり、キム・ヨジンが強烈な個性で演じていた。英祖の息子の思悼(サド)世子が米びつに閉じ込められて餓死した後、貞純(チョンスン)王后は思悼世子の息子イ・サンの失脚を狙って数々の陰謀を働いていた。
また、歴史的には、イ・サンが亡くなって息子の純祖(スンジョ)が10歳で即位すると、後見人として代理で政治を仕切り、カトリック教徒の大虐殺事件を引き起こしている。
第3位/『トンイ』の張禧嬪
韓国時代劇の悪女といえば、真っ先に名前が浮かぶのが張禧嬪(チャン・ヒビン)だ。一介の女官から王妃になったが、傲慢な態度で最後は死罪となった。まさに歴史的な悪女であり、『トンイ』ではイ・ソヨンが演じていた。
とはいえ、イ・ソヨンはわりと上品に演じていて、それまで描かれた悪女とはタイプが違った。いわば、理性的な悪女という感じだった。しかし、ハン・ヒョジュが演じたヒロインのトンイをじわじわと苦しめていく姿はとても迫力があった。
第2位/『オクニョ~運命の女(ひと) 』の文定王后
11代王・中宗(チュンジョン)の三番目の正室で、悪役が多いキム・ミスクが扮していた。この卑劣な文定(ムンジョン)王后は、自分が産んだ我が子を即位させるため、中宗の先妻が産んだ12代王・仁宗(インジョン)を毒殺してしまった。
そうして息子が13代王・明宗(ミョンジョン)として即位すると、文定王后は自分の一族で要職を独占して賄賂を横行させた。まさに悪魔のような王妃であり、干ばつが多くて餓死者が続出したときも文定王后は庶民を見殺しにした。
第1位/『赤い袖先』の提調尚宮チョ氏
ドラマ用に設定された架空の人物なのだが、演技派のパク・ジヨンが演じた提調尚宮(チェジョサングン)チョ氏は、ゾクゾクするほどリアルな存在感があった。立場としては女官のトップであり、秘密結社を作って暗躍していく。女官たちの権利を守るという名目のもとで、気に入らない国王がいた場合にそれを排除できる強力な組織を作ろうとするのだ。
特に世孫(セソン)だったイ・サンの即位を阻止するために、悪徳官僚たちと組んで徹底的に悪事に手を染めていく。そういう意味で、提調尚宮チョ氏というのは本当に狡猾な女官であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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