時代劇『赤い袖先』は本当に見どころが多いドラマであった。まずはイ・ジュノとイ・セヨンの主役コンビが本当に素晴らしかった。
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イ・ジュノは名君として有名なイ・サンの世子から国王までの人生を叙情的に演じていたし、イ・セヨンは朝鮮王朝時代には珍しいほど自立した女官を強い意志で表していた。二人の迫真の演技によって、『赤い袖先』はドラマの歴史に残るほどの傑作となった。
同時に、『赤い袖先』が描き出したもう一つの側面も見逃せない。それは、朝鮮王朝時代の王宮に奉職した女官たちの哀感であった。とにかく、女官の人生そのものが生々しく描かれていたのが『赤い袖先』の真骨頂だったのだ。
実際、イ・セヨンが演じた女官のソン・ドギム(成徳任/歴史的に宜嬪・成氏〔ウィビン・ソンシ〕と称された)は実在した女性だ。当時、ソン・ドギムが生きていた18世紀の後半には、王宮に700人ほどの女官が奉職していたと推定されている。
女官は建前上で国王と結婚したとみなされるので、恋愛は絶対に厳禁だった。仮に他の男性と恋愛した事実がわかると厳しく処罰された。ときには処刑されることもあった。
このように自らをストイックに律していかなければならなかった女官たち。若い時は体力もあり問題ないのだが、中年以降になって徐々に年を取ってくるとかなり厳しい状況に置かれる。わかりやすく言えば、病気になって働けなくなるとすぐに王宮から出されてしまうのである。この処遇はつらい。
また、働き手として動きが鈍くなると、とたんに冷たい扱いを受ける。そういう不安定な身分であった女官たちのことを『赤い袖先』はしっかり実録として描ききっていた。
さらに、女官が自分たちの権利を守るために組織的に過激に活動する場面もよく登場した。そうやって女官たちが生活を必死に守ろうとする生きざまは、十分にドラマの中で知ることができた。
そういう意味でも、『赤い袖先』は主人公二人のラブロマンスだけでなく、女官の人生そのものにも鋭く切り込んだドラマとして画期的な作品であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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