2022年の韓国ドラマを振り返ると、やっぱり『シュルプ』の出来の良さが衝撃的だった。史実とは違って架空の時代設定なのだが、王妃と大妃が対立する王宮物語として企画・映像・俳優陣が本当に優れていた。
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そんなふうに『シュルプ』を称賛すればするほど、もう一つの時代劇が同じように思い出される。それは、2022年1月1日にMBCで放送を終えた『赤い袖先』である。
もう放送終了から1年が経ってしまった、と時の流れの速さを思わずにはいられない。とはいえ、このドラマを時代劇の最高傑作と評価した気持ちはまったく変わっていない。
イ・ジュノとイ・セヨンの最高の演技、歴史に名高いイ・サンと宮女ソン・ドギムの自立した愛を描いたストーリー、王宮で奉職する女性たちの生きざまを取りいれた重層的な構成、卓越したアングルと照明が作り出した美しい映像……本当に完成度がきわめて高い時代劇であった。
特にイ・ジュノは主人公が世子から国王に成長していくプロセスを繊細かつ叙情的に演じて絶賛を浴びた。2022年5月に開催された百想芸術大賞・テレビ部門ではK-POP出身俳優としてイ・ジュノが初めて最優秀演技賞を受賞して、究極的な喜びをあらわしていた。
そのように感激する様子を見ていて、『赤い袖先』が才能あるアーティストの人生まで変えてしまうほどインパクトが強烈な作品であったことを実感した。
韓国ドラマは次から次へと面白い作品が作られていて、新作が出てくるタイミングが本当に速い。1年も経つと新作でも記憶の中に埋もれてしまうことになりかねないが、『赤い袖先』は輝きを失っていない。それどころか、イ・サンとソン・ドギムが作り出した名シーンが今も心に甦ってきて胸を熱くさせてくれる。
そして、『赤い袖先』の本当の凄さを痛感するのは、これからの数年間かもしれない。この傑作に影響されて究極の愛を描いた王宮物語がかならず作られていくだろう。そのとき改めて「時代に愛されたドラマ」として『赤い袖先』が新たな脚光を浴びるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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