『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』では、ペ・ジョンオクが演じた大王大妃(テワンテビ)が、自分の操り人形にできる哲宗(チョルジョン)を即位させて、裏で権力を操ろうとしていた。そのため無学の王族男性を国王に据えたのに、キム・ジョンヒョンが演じた哲宗は意外に賢い人物で、大王大妃と対立してまで民衆のための政治を実行しようと奮闘した。
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そういう意味で、『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』は哲宗の株を大いに上げた時代劇であったのだが、現実はドラマのようにいかなかった。
本来、哲宗は勉学に励んで国王にふさわしい学識を備えなければならなかったのに、結局は酒と女に溺れて怠惰な生活に甘んじてしまった。
しかし、哲宗が即位した直後は、大王大妃も国王にかなり期待していた。それがわかるのは、朝鮮王朝の歴史を記録した正史『朝鮮王朝実録』に、大王大妃が哲宗に励ましの言葉をかけている場面がひんぱんに残っているからだ。
たとえば、哲宗が1849年の即位当時、漢字をよく知らなくて高官たちから軽蔑の目を向けられたときも、大王大妃は哲宗のことをかばってこう語っていた。
「500年の朝廷をまかせられる人を得られて本当に幸せなことです。殿下は過去に苦難が多く、長く田舎で暮らしていました。それだけに、民の苦労がわかることでしょう」
「民を愛する道理は倹約の他にはありません。万が一それができなければ、その被害は多くの人に及んでしまうでしょう。民が生きられなければ国は滅びてしまいます」
こう述べたうえで、大王大妃は有意義な教訓を強調した。
「常に“愛民”の二文字を忘れないようにしてください。また、人は学ばなければ過去の出来事がわかりませんし、そうなれば国を治めることはできません」
大王大妃はこのように哲宗への期待を口にしていたのだ。
しかし、哲宗は大王大妃の言葉に従うことができなかった。むしろ、『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』で描かれた哲宗こそが、大王大妃が願ったことを実現しようとしていた。
現実では立派に成長できなかった哲宗を物語で理想的に甦らせたという意味で、『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』は哲宗讃歌のドラマだと言える。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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