ユニークな時代劇だった『哲仁王后~俺がクイーン!?~』では、キム・ジョンヒョンが哲宗(チョルジョン)を演じた。ドラマの中で哲宗は理知的な人物として描かれていたが、実際の彼は田舎で育ったので学問を積んでいなかった。
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それでも国王になれたのは、絶大な権力を握っていた大王大妃(テワンテビ)が「操り人形」になってくれる無学の若者をあえて国王に据えたからである。こうして哲宗は1849年6月9日に25代王として即位した。
直後に大王大妃は高官たちにこう述べた。
「殿下が君主として務めを果たすためには学識が絶対に必要です」
大王大妃がここまで学識を強調したのは、異例なことだった。しかし、それも仕方がなかった。哲宗は漢字があまり読めなかったからだ。
王宮に住む王族の男子なら、小さいころから勉学に明け暮れる。当然、漢字も熟知している。しかし、貧しい王族として地方で育った哲宗は、農地を耕すのが精一杯で勉学する機会がなかった。
そのために、公式会議で哲宗は漢字で命令書を出すことができず、ハングルを使うことになった。当時、ハングルは「学識がない人が使う文字」としてエリート層から軽視されていたが、哲宗には特例が認められた。
高官の鄭元容(チョン・ウォンヨン)は、哲宗に率直に尋ねた。
「今までにどのような本を読んでこられたのでしょうか」
この問いに哲宗はおどおどしながら答えた。
「『通鑑(トンガム)』2巻と『小学(ソハク)』を1巻……」
このとき哲宗が言った『通鑑』とは中国の歴史書のことで、本来なら全294巻から成り立っているが、哲宗はその2巻しか読んでいなかった。
また、『小学』は儒教の修身や作法の教科書で子供向けだ。それも、全6巻の中で哲宗は1巻だけ読んだという。この返答に高官たちは呆然とするしかなかった。
哲宗の無学ぶりは大王大妃や高官たちを不安にさせた。哲宗は18歳だったのだが、周囲の人たちから見れば、10歳未満の子供が王位に上がったようなものだった。
『哲仁王后~俺がクイーン!?~』では哲宗が文書をさかさまに読むシーンが何度かあったが、それはギャクではなく、史実の哲宗を彷彿(ほうふつ)させていたのかもしれない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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