映画『スキャンダル』や映画『恋の罠-淫乱書生-』でも描かれているが、朝鮮王朝時代の恋愛観は特徴的だ。
例えば、道をすれ違った男女の目が合ったとする。知り合いでもないかぎり、そこで軽く声をかけるような行為は、はしたない行為とされた。
逆に、視線を外し目が合わないようにすることが美徳とされたという。
また、男女が直接会話をすることも恥ずべき行為だった。同じ場所やすぐ隣にいても、紙にメモ書きをして直接会話するのはなるべく避けたと言われている。
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そもそも朝鮮王朝時代は儒教が国の理念として徹底され、男女の恋愛には厳しい規制が設けられていた。社会的な法律や価値観が、自由な恋愛を許さなかったと言っても過言ではないだろう。
特に女性は、恋愛に関して厳しく制約され、結婚後に夫を亡くした場合にも再婚は禁止されていた。
朝鮮王朝・第9代王の成宗(ソンジョン)が在位した時代(1469~1494年)になると、再婚した女性の子供たちは自らの過去を確認できない法律が作られた。
また、朝鮮王朝では未婚の男女が婚姻前に体の関係を結んだ場合にも、姦通罪が適用されたという。女性の貞操は徹底的に守られなければならなかったのだ。
しかも、刑罰も重かった。女性は官婢にされ、男性は流刑に。ただし、支配者層の女性は厳重に処罰され、男性はほとんど恩赦。つまり朝王朝の姦通罪は、支配層の女性の道徳性を強調するための道具として使われたわけだ。
それでいて主観的心証だけで姦通罪とし、女性の悪い品行そのものを姦通行為して処罰。朝鮮王朝後期には夫や息子が、姦通男女を殺害することが一部容認され、姦通の疑いだけでも、殺害行為が行われたこともあったと言われている。
文=慎 武宏
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