Netflixで絶賛配信中の韓国ドラマ『暴君のシェフ』 。韓国はもちろん、日本でも人気を呼んでおり、100%フィクションのフュージョン史劇ながらこのドラマをキッカケに初めて韓ドラ時代劇を観ているという視聴者も多いかもしれない。
そして、こう思っているのではないだろうか。王様イ・ホンは絶対的存在で、臣下たちはどんな無理難題でもその命令や要求では従わねばならないのかと。
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劇中で朝鮮王朝時代にタイムスリップしてしまったフランス料理シェフのヨン・ジヨン(演者イム・ユナ)も、王の絶対権力を目の当たりにして驚き当惑すること、一度や二度ではない。
ただ、それは決してオーバーではない。実際にも朝鮮王朝の王の権限は絶対的なものだったといわれている。
例えば、朝鮮王朝時代の基本法典といえる『経国大典』には、さまざまな官職の権限が規定されているが、こと王の権限と役割については記述されて“いない”。これは、王が法で縛られない存在であったことを表している。
実際に朝鮮王朝の王は、立法、司法、行政、財政を一手に担っていた。死刑の判決を下せるのも、朝廷の人事権を握っていたのも王だ。
当時は議政府と六曹を基盤にした行政機関が国務を担っていたため、その人事を握っていた王は、政治を思い通りに動かすことができたと考えられる。
王の権力の強さを知るためにわかりやすいのは、軍事関連の行事の記録ではないだろうか。例えば、「講武(カンム)」と呼ばれる軍事訓練を兼ねた狩猟には、騎兵や歩兵など3万人が動員されている。
軍事訓練とは名ばかりの遊戯に、3万もの人数を動かすのだから、その権限の大きさが伝わってくる。ちなみにその講武は、財政が厳しくなった16世紀以降、ほとんど行われていない。
『暴君のシェフ』の王様イ・ホンは、朝鮮王朝・第10代王の燕山君(ヨンサングン)がモチーフになっているとされており、燕山君が執権したのは16世紀前半だった。つまり、イ・ホンが絶対権力を持つことも決して大袈裟ではないのだ。
さらに当時の王は世俗的な権限だけでなく、神に近い存在とも考えられていた。国家祭礼を主宰できる王は、神と疎通できる者として、豊作の祈願なども行なっていたのだ。
国家の重要な権限をすべて握り、ときに超越者としても崇められた朝鮮王朝の王たち。残された記録だけを見ると、王はまさに“国家そのもの”だったといっても過言ではないだろう。
構成=韓ドラ・時代劇.com編集部
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