『トンイ』というドラマで、主人公トンイの出自としてよく出てきたのが剣契(コムゲ)だった。ドラマの中で剣契は、最下層の人たちの秘密結社と説明されていた。
その人たちは身分制度に不満を持って政治に反抗したのだが、確かに不平等な社会に不満を持った人たちが多かったのは事実であり、そういう歴史を『トンイ』も受け継いでいた。
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朝鮮王朝ではなぜ不平等な社会になっていたのか。
それは、国教の儒教には身分の相違を認める思想があり、朝鮮王朝の統治が身分の格差を利用したからだ。そうして出来上がった身分制度は、両班(ヤンバン)、中人(チュンイン)、常民(サンミン)、賤民の四段階にわかれていた。
両班は貴族階級であり、中人は専門職を持った人々であり、常民は農業や商業に従事する一般庶民だった。そして最下層の身分となったのが賤民である。
賤民には、奴婢(ぬひ)、奴生(キセン)、芸人などが該当した。圧倒的に多いのは奴婢であり、この人たちは戸籍によって徹底的に管理された。なぜそこまで管理されたかというと、自分の意思に反して売買されたからだ。
特に農業の働き手になったり、裕福な家の使用人になったりしたのだが、労働の現場は本当に大変だった。
中でも雇い主が悪いと、満足に食事も与えられないのに徹底的に働かされた。それゆえ逃亡する奴婢も後を絶たなかった。そういう逃亡民は捕らえられてひどい仕打ちを受けることも多かったという。
こうした劣悪な環境におかれた賤民は、身分制度によって生まれながらにして自分の生き方をずっと制約された。
不満が出るのは当然であり、そういう人たちが集まって自分たちの待遇改善を要求することもあった。それが先鋭化すると秘密結社に発展することもあり、そういう歴史を踏まえて『トンイ』でも剣契が描かれていたのだ。
そういう意味では、『トンイ』というドラマは朝鮮王朝の身分制度を現代に広く伝える役目も果たしていたと言える。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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