Netflixで配信中の『暴君のシェフ』は、時代劇の荘厳さにファンタジーの幻想とロマンスのときめきを重ね合わせた独創的な作品である。舞台は朝鮮王朝、そこにフランス料理界で名声を極めた1人の女性シェフが、運命に導かれるように時空を越えて投げ込まれる。
【写真】少女時代・ユナ、パリで撮られた姿に「知的で優雅で愛らしい」の声
宮廷の厨房で、暴君として恐れられる王と相対する。この鮮烈な設定自体が、従来の韓流ドラマにはなかった新たな地平を切り開いている。料理と歴史、愛と権力という普遍的で重厚なテーマが交差し、観る者を否応なく物語の深淵へと誘うのである。
物語の中心に立つのは、イム・ユナが演じるヨン・ジヨンである。彼女はフランスの三つ星レストランでその名を轟かせていたが、父の遺した古書を開いた瞬間、予期せぬ渦に呑み込まれ、時代も文化も異なる朝鮮王朝へと転移する。
豪華な舞台ではなく、異国の宮廷という孤立無援の世界で、彼女が唯一頼れるのは料理という技のみであった。言葉も通じず、慣習も理解できぬ中で、包丁を握り、炎を操り、味で心を動かす彼女の姿は、視聴者の心に鮮烈な印象を刻みつける。
イム・ユナは劇中で圧巻の包丁さばきを披露しているが、その裏には徹底した準備があった。撮影前には実際に料理教室へ通い、包丁の扱いや食材の下ごしらえといった基礎から丹念に学び取ったのである。
登場する料理を自ら習得し、その所作を体得することで、単なる演技の域を越えた真実味を獲得しようとした。
彼女自身も「以前より確かに腕は上がったが、包丁さばきは最後まで難しかった」と語った。その言葉には、役に命を吹き込むための真摯な努力と、女優としての矜持が透けて見える。
そんなイム・ユナは、2007年にK-POPグループ“少女時代”のメンバーとして華麗にデビューし、瞬く間に世界的人気を得た。その輝かしい舞台の裏で、彼女は女優としての道を着実に歩んできた。
初主演作『君は僕の運命』で最優秀新人女優賞を受賞し、その後も『ラブレイン』では二役を鮮やかに演じ分け、『王は愛する』では古典劇のヒロインとして堂々たる存在感を示した。
さらに『THE K2~キミだけを守りたい~』ではアクションと人間ドラマを融合させ、『ハッシュ~沈黙注意報~』では社会派ドラマでリアリティ溢れる演技を披露し、『キング・ザ・ランド』では現代女性の瑞々しい姿を描いていた。
さらに、『悪魔が引っ越してきた』では、深夜になると“悪魔”へと変貌してしまう女性に扮している。こうして積み重ねた軌跡は、アイドル出身という枠を越えた実力派女優の証である。
『暴君のシェフ』は、そんな彼女のキャリアをさらに拡張する試みである。料理という普遍の題材を軸に、愛、権力、歴史の壮大なテーマを絡め取り、現代女性が抱える葛藤や情熱を鮮やかに投影する。
歌手としての華やかな出発点から、女優としての円熟を経て、今度は歴史と料理を交差させる舞台へ挑むイム・ユナ。その姿は、成長と進化を証明し、未来へと続く道を力強く照らしているのである。
♢イム・ユナ(少女時代) プロフィール
生年月日:1990年5月30日生まれ
身長:168cm
星座:ふたご座
学歴:東国大学演劇学科
デビュー作:2007年、少女時代「また出会った世界」
☆主な出演作
『君は僕の運命』(2008年~2009年、ドラマ)
『ラブレイン』(2012年、ドラマ)
『THE K2~キミだけを守りたい~』(2016年、ドラマ)
『王は愛する』(2017年、ドラマ)
『コンフィデンシャル/共助』(2017年、映画)
『EXIT イグジット』(2019年、映画)
『ハッシュ~沈黙注意報~』(2020年~2021年、ドラマ)
『ビッグマウス』(2022年、ドラマ)
『キング・ザ・ランド』(2023年。ドラマ)
『悪魔が引っ越してきた』(2025年、ドラマ)
文=大地 康
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