『イ・サン』というドラマで輝きを放つイ・ソジンが扮したイ・サンには、鍛錬された剣の技巧を誇示する場面もあった。彼が鮮烈に描き出したのは、闇から襲い来る刺客に対し、優雅なる動きと鋭い思考で応戦する一幕だ。このときイ・ソジンが示した殺陣は、視覚を裂くような鋭さを誇っていた。
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しかし、演技の前に、彼はイ・ビョンフン監督から「アクションシーンはほとんどないので、稽古の必要はない」と告げられていた。心地よい安堵を覚え、イ・ソジンはその言葉を信じていた。だが、実際の撮影が始まると、彼の前に広がったのは予想外にもアクションシーンの連続であった。
それにも関わらず、イ・ソジンは確固たる覚悟を胸に、殺陣のシーンを全力で演じることを決意した。イ・ビョンフン監督はイ・ソジンの身の安全を深く案じ、代役を立てることを提案したが、それをイ・ソジンは勇敢にも拒んだ。彼は自分自身の身体でアクションシーンを完璧にこなした。こうして彼は文句なしの主人公を演じ上げたのだ。
一方、『イ・サン』において美しいヒロインのソン・ソンヨンに扮したのは、情感豊かな女優ハン・ジミンである。彼女が撮影の中で最も苦難と感じたのは、布で覆われてこん棒で叩かれる場面だった。このときは、本当につらかったという。
また、『イ・サン』は寒さが厳しい時期に撮影が進行されたことが多かった。もちろん、降り積もる大雪に見舞われることもあった。その雪は、彼女が身にまとう韓服にしみ込み、その布地を冷たく濡らしてしまった。
そんな苦難を乗り越えながら撮影に挑むハン・ジミン。本当に寒い時期は撮影を待っている時間もとても大変なのだが、それは共演者も同じであった。実際、寒さに対する辛抱を続ける中で、撮影に臨むみんなの連帯感が深まり、チームワークが抜群になっていった。
ハン・ジミンも、耐え難い経験を重ねる度に深く共感し、台本の読み合わせを行なう中で感情があふれて涙がこぼれ落ちることもあった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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