NHKの総合テレビで毎週日曜日に放送されている『ヘチ 王座への道』では、とても印象的な女優がハツラツとした演技を披露している。
それがコ・アラである。彼女は『ヘチ 王座への道』で、司憲府(サホンブ)の捜査官のヨジに扮している。
まさに、ヨジはなみいる男性をおしのけて強烈な行動力を発揮する女性だ。本来、朝鮮王朝は男尊女卑の風潮が強くて、女性が官僚になるのは難しかった。
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わかりやすくいえば、女性が王宮で働くといえば、王族の身の回りの世話をする女官ばかりであり、官僚というのは完全に男だけの世界だった。しかし、『ヘチ 王座への道』では、登場人物の中に、本来はありえない女性官僚を出してきた。
このあたりは『ヘチ 王座への道』の設定の斬新なところであり、そうして生まれた女性捜査官というキャラクターをコ・アラがとても情熱的に好演している。
それにしても、コ・アラが扮しているヨジは型破りな女性だ。捜査に取り組む執念が尋常でなく、自分の信念を貫くためなら、国王ですら容疑者にしてしまいそうな迫力を感じさせる。その執着ぶりは、どんな男もかなわない。
しかも、仕事だけではない。酒を飲むときには、まさに「鯨飲」という言葉がピッタリくるくらい底なしだ。一事が万事であり、とにかくヨジというキャラクターは破天荒なのである。
そんな女性を演じるのだから、コ・アラも役作りが本当に大変だったに違いない。
彼女は『ヘチ 王座への道』の前に『花郎〈ファラン〉』で時代劇を経験していた。ただし、『花郎〈ファラン〉』は新羅時代という古代の物語なので、朝鮮王朝とは時代設定が相当違っている。そうした苦労があったはずだが、コ・アラは演技者として朝鮮王朝の雰囲気をよく身につけていて、身分制度が厳しかった時代の男女の付き合い方もソツなくこなしていた。
そんなコ・アラが演じるヨジだが、チョン・イルが扮している延礽君(ヨニングン)とからんでいく場面が増えていくと、女性としての繊細な情愛も随所に見せるようになっていく。破天荒な性格一辺倒ではなく、繊細な表現もうまく併せ持っているのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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