2025年の韓国ドラマ界では、単なる恋愛の甘さではなく、「人生の選択」や「時間の重み」を内包したラブストーリーが強い存在感を放った。再生、再会、すれ違い、そして信頼──人と人が向き合う過程を丁寧に描いた作品が、視聴率以上に深い余韻を残している。本稿では、そうした流れの中から、物語性と完成度の両面で高い評価を得た“ラブストーリーの2025年ベスト5”を選定し、その魅力をひも解いていく。
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ドラマ『私たちの映画』は、映画制作の現場を舞台に、創作に人生を懸ける人々の葛藤と再生を描いたヒューマンドラマだ。
物語の主人公は、かつて高い評価を受けたものの、ある出来事をきっかけに次の一歩を踏み出せずにいる映画監督イ・ジェハ。彼が新作映画の制作に挑む過程で、限られた時間を生きる女優志望の女性と出会い、映画と人生を重ね合わせていく。
主演を務めるのはナムグン・ミン。孤独や焦燥、創作者としての責任を内に抱えた監督像を、抑制された演技で表現し、放送前から高い期待を集めた。ヒロイン役のチョン・ヨビンは、病を抱えながらも演技への情熱を失わない女性を繊細に演じ、作品の感情的な軸を担っている。
韓国放送開始後は「静かだが深く刺さる」「人生と映画を同時に描いた大人のドラマ」といった評価が相次ぎ、視聴率以上に作品性や俳優陣の演技力が話題となった。
制作発表会でのナムグン・ミンの作品観や、チョン・ヨビンとの初共演に関するコメントもニューストピックスとして注目されている。創作の痛みと希望を真正面から描いた一作だ。
『マイ・ユース』は、かつて輝いていた青春と、思いがけず再会した現在が交差することで浮かび上がる“人生の途中”を描いたヒューマンロマンスだ。
物語の中心にいるのは、華やかな成功を経験しながらもどこか空虚さを抱えて生きる主人公と、過去の傷を胸に秘めたまま日常を送るもう一人の主人公。偶然の再会をきっかけに、二人は忘れかけていた夢や感情と向き合っていく。
主演を務めるのはソン・ジュンギ。大人になった今だからこそ滲み出る孤独や葛藤を繊細に表現し、新たな代表作になるとの期待を集めた。
相手役にはチョン・ウヒが出演し、静かな強さと揺れる感情を併せ持つキャラクターをリアルに演じている。放送前からキャスティング自体が大きなニュースとなり、制作発表段階で高い話題性を記録。
放送後は「青春を美化しない誠実な描写」「余韻が長く残る大人のロマンス」と評価され、視聴率以上に作品性が注目された。過去を悔やむのではなく、今をどう生きるかを問いかける一作だ。
『恋するムービー』は、映画を愛する若者たちの仕事と恋、そして成長を描いた青春ロマンスドラマだ。
物語の舞台は映画業界。評論家、助監督、俳優志望など、それぞれ異なる立場で“映画”に関わる若者たちが出会い、ぶつかり合いながら自分の居場所と感情を見つけていく。中心となるのは、映画を心から愛するがゆえに不器用な恋を重ねる主人公たちの関係性で、夢と現実の間で揺れる姿が等身大で描かれる。
主演を務めるのはチェ・ウシクとパク・ボヨン。チェ・ウシクは、映画への情熱と繊細さを併せ持つ青年を演じ、共感を誘う自然体の演技を披露する。一方、パク・ボヨンは、自立心が強く現実的でありながら、心の奥に孤独を抱えた女性を演じ、感情の機微を丁寧に表現している。
この組み合わせ自体が大きな話題を呼び、制作発表の段階から高い注目を集めた。配信開始後は「会話の温度が心地いい」「恋愛だけでなく仕事ドラマとしても秀逸」と評価され、派手さはないが余韻の残る作品として支持を拡大。俳優陣の相性やリアルな感情描写がニューストピックスでも多く取り上げられ、“静かに刺さる青春ドラマ”として印象を残している。
韓国ドラマ『わたしの完璧な秘書』は、仕事一筋で生きてきた女性CEOと、彼女を支える有能な秘書の関係性を軸に、人と人との距離が少しずつ変化していく過程を描いたオフィス・ヒューマンドラマだ。
主人公は冷徹で隙のない経営者カン・ジユン。判断力と実行力で会社を率いる一方、私生活では不器用さを抱えている人物で、ハン・ジミンがその強さと脆さを同時に表現している。
彼女の秘書ユ・ウノを演じるのはイ・ジュニョク。完璧な実務能力だけでなく、人の感情を察する力を持つキャラクターで、静かな包容力が物語の温度を保っている。
脇を固めるのは、職場の同僚や家族を演じる実力派俳優たちで、単なる恋愛補助線ではなく、それぞれが仕事や人生の価値観を体現する存在として機能する。
「大人のためのロマンス」「会話劇が秀逸」と評価され、主演2人のケミストリーやイ・ジュニョクの新境地がニューストピックスとして注目された。派手な事件に頼らず、信頼が積み重なる過程を丁寧に描いた点が支持され、オフィスドラマの良作として印象を残している。
ドラマ『北極星』は、国家の中枢で起きる極秘事件を軸に、信念と裏切り、選択の重さを描く超大型サスペンスラブストーリーだ。、国連大使として国際的な名声を築いたムンジュ(演者チョン・ジヒョン)が、大統領候補襲撃事件の背後を追う中で、彼女を守る任務を背負った正体不明の特殊要員サンホ(演者カン・ドンウォン)とともに、朝鮮半島を脅かす巨大な真実に直面する物語である。
演出を手がけたのはキム・ヒウォン監督。『ヴィンチェンツォ』『涙の女王』などでジャンル性と大衆性を巧みに融合させてきた演出家で、本作でも国際的なスケール感と人物心理を同時に描き出す。脚本はチョン・ソギョン作家。映画『母なる証明』『別れる決心』などで知られ、単純な善悪では割り切れない人間の選択を描くことに定評があり、『北極星』でも政治サスペンスに深い人間ドラマを持ち込んでいる。
チョン・ジヒョンが演じるソ・ムンジュは外交官で元国連大使だったが、夫であり次期大統領候補だったチャン・ジュニクが集会で射殺されるのを目撃し、その遺志を継いで自身が大統領選に出馬する決意を固める。夫の死の真相を追う過程で、単なる政治サスペンスではない「個人の信念と責任」を象徴する役どころとして描かれている。
カン・ドンウォンが演じるのは、ペク・サンホという謎めいた特殊工作員だ。彼は脱北者でありながら優れた戦闘能力と情報処理能力を持ち、ムンジュの命を狙う勢力から彼女を守るため、ボディガードとして共に行動することになる。ムンジュの理念と行動に共感し、やがて二人は信頼を築いていく。
脇を固めるのは、韓国ドラマ界を支えてきたベテラン俳優陣だ。キム・ヘスクは国家権力の背後に立つ象徴的存在として登場し、『ディア・マイ・フレンズ』『マイ・ディア・ミスター』で見せた包容力とは異なる、重みある存在感を放つ。イ・ミスクは冷徹さと人間味を併せ持つ人物を演じ、物語に緊張と説得力を加える。さらに、ユ・ジェミョン(『梨泰院クラス』『秘密の森』)は現場感覚に優れた実務派の人物として登場し、理想と現実の狭間で揺れる姿をリアルに表現。オ・ジョンセ(『サイコだけど大丈夫』『悪鬼』)は一筋縄ではいかないキーパーソンを演じ、物語の方向性を大きく左右する存在となる。
見どころは、派手なアクション以上に、人物同士の視線や沈黙、言葉の裏に潜む駆け引きだ。国家とは何か、正義とは誰のためにあるのかを突きつける重厚な構成と、映画級の映像美が融合し、「フラッグシップ級ドラマ」と高い評価と期待を集めた。
(文=韓ドラLIFE編集部)
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