ドラマ『不滅の恋人』は、王子同士の激しい対立を描いたスケールの大きい歴史劇だった。この作品でユン・シユンが演じたイ・フィという主役は、モデルが安平大君(アンピョンデグン)である。さらに、『王女の男』ではイ・ジュソクが安平大君を演じていた。
【関連】『不滅の恋人』のリアル。もし安平大君が勝っていたら歴史はどうなった?
彼は、名君として有名な4代王・世宗(セジョン)の三男として1418年に生まれた。
なお、世宗の長男が後に5代王になった文宗(ムンジョン)であり、二男が首陽大君(スヤンデグン)だ。その1歳下の弟が安平大君だったのである。
安平大君は幼いときから才能が抜群で、芸術的な能力を存分に発揮した。成人してからは、詩、書、画の三部門で卓越した業績を残し、「三絶」と称賛された。
これは、「三つの芸術で絶対的に優れている」という意味である。特に安平大君の書風は、朝鮮王朝前期に大流行し、多くの人がこぞって安平大君の書を真似て筆を動かしたほどだった。
世が平和であれば、安平大君は芸術家として最高の人生を歩むことができたはずだ。しかし、兄が起こした政変が安平大君の人生を大きく変えてしまった。
1450年、世宗が亡くなり長男が文宗として王位を継いだが、わずか2年で亡くなった。文宗の長男が端宗(タンジョン)として即位したが、まだ11歳だったので重臣の金宗瑞(キム・ジョンソ)が後見人になった。
彼が警戒したのが、王位に野心を燃やす首陽大君だった。その存在は脅威であり、対抗できるのは安平大君しかいなかった。
このように重臣たちが安平大君に期待する中で、武人的な資質を持っていた首陽大君はついに1453年にクーデターを起こして、金宗瑞と同調する大臣たちを殺害した。その上で、首陽大君は政権を乗っ取り、安平大君を反逆の首謀者に仕立てあげた。結局、安平大君は流罪にされた末に死罪となった。
安平大君の卓越した才能を世の中に生かせば、どんなに素晴らしいことだったか。しかし、安平大君は35歳で無念の死を遂げた。
その後、首陽大君は1455年に端宗から王位を強奪し、7代王・世祖(セジョ)として即位した。退位させられた端宗は、1457年に死罪となってしまった。
【安平大君(アンピョンデグン)の人物データ】
生没年
1418年~1453年
主な登場作品()内は演じている俳優
『王女の男』(イ・ジュソク)
『不滅の恋人』(ユン・シユン)
文=大地 康
前へ
次へ