ドラマ『トンイ』では、19代王・粛宗(スクチョン)をチ・ジニが演じ、仁顕(イニョン)王后にはパク・ハソンが扮していた。そして、イ・ソヨンが、粛宗の側室の張玉貞(チャン・オクチョン/後の張禧嬪〔チャン・ヒビン〕)を演じていた。
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ドラマから史実に話を移していくと…。1686年、張玉貞はついに運命の階段を一段登った。粛宗の深い寵愛を受け、一介の宮女から「淑媛(スグォン)」という華やかな従四品の品階に昇格したのである。その瞬間、彼女は名実ともに国王の側室として認められた。
だが、宮廷の高官たちの中には、この「淑媛昇格」に眉をひそめる者も多く、反発の声が政権内部をざわつかせた。当時の朝廷は、派閥争いが激しかった。そんな中で粛宗が張玉貞を寵愛したことは、火に油を注ぐようなものであった。
しかし、当の張玉貞は周囲の騒ぎなど意に介さず、むしろ側室の地位を手に入れたことで、いっそう自由奔放な振る舞いを見せるようになった。願いごとがあれば、ためらいもなく粛宗にねだり、まるで世界が自分のために回っているかのようにふるまった。
その願いの1つとして、兄・張希載(チャン・ヒジェ)が次第に官職を得て頭角を現していく(『トンイ』ではキム・ユソクが張希載を憎たらしく演じていた)。これは張玉貞にとって、何よりも心強いことだった。
なぜなら、彼女の野望(王子を産んで王妃の座を手に入れること)を実現するには、「味方」が必要だったからである。そして、その役割を担うべき人物こそが実の兄であると張玉貞は信じて疑わなかった。
張希載もまた、その期待に応える覚悟を持っていた。自分が妹のおかげで出世していることを理解していたからこそ、妹がさらに高い地位を目指すのであれば、それは自身の官位の飛躍にもつながると悟っていた。
そうした野心の延長線上にあったのが仁顕王后の廃位計画だ。張希載が密やかに動き始めた。もとより仁顕王后にとって、張玉貞に目をかけたことが、皮肉にも自らの足元をすくう結果を生んでしまったのである。
文=大地 康
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