テレビ東京の韓流プレミアで放送中の『赤い袖先』。9月21日の第15話では、朝鮮王朝第21代王・英祖(ヨンジョ)を囲んで王族同士の祝宴が開かれていた。そのとき、出された料理を見て英祖が驚愕するシーンがあった。それは、料理の中に「蟹と柿」であったからだ。それから英祖は様子がおかしくなってしまった。
歴史を知っている人なら、この場面を見てすぐに思い浮かぶことがある。その出来事が起こったのは1724年だった。
当時の国王の景宗(キョンジョン)は胸と腹に激しい痛みを感じ、医官の診察を受けた。そのとき、ケジャン(蟹を醤油漬けにした料理)と柿を一緒に食べたことによって食あたりを起こしたと診断された。その後、景宗は身体がどんどん衰弱していって、ついには亡くなってしまった。
結局、死の直接の原因は「ケジャンと柿の食べ合わせ」とされた。それによって、景宗の異母弟であった英祖を非難する声が大きくなった。なぜなら、医官たちはケジャンと柿を景宗の食卓に出すことを反対したのに、英祖が無理に景宗に食べさせたという事実があったからだ。
英祖はかねてから医官たちの意見に耳を貸さないところがあった。そうした過去があるだけに、疑われても仕方がなかったのである。本当に、英祖は兄の景宗を殺そうとしたのか。景宗が亡くなれば異母弟の英祖が国王になれるだけに、英祖には確かな動機があったのである。
果たして、英祖はどういうつもりで医官たちの反対を押し切って、景宗に「ケジャンと柿」を食べさせたのか。この話は王宮の中でも長い間にわたって論議を呼んでいた。
そういう歴史的な事実があっただけに、『赤い袖先』で描いたように英祖の御膳に「蟹と柿」を出すというのは厳禁だったのだ。それなのに、状況をわきまえないで「蟹と柿」が出されてしまった。英祖が驚くのも無理はなかった。
これは、イ・ジュノが演じるイ・サンを陥れるための策略なのだろうか。イ・サンがますます窮地に立たされてしまうのかも……。
文=大地 康
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