テレビ東京の韓流プレミアで放送されている『イ・サン』では、8月24日の第72話において王宮に刺客が襲ってくるという騒動が描かれていた。
朝鮮王朝の歴史を細かく記した『朝鮮王朝実録』には、実際にイ・サンの暗殺を狙って刺客が王宮に侵入した事実が書かれている。その記述によると、事件が起きたのは1777年7月28日の深夜だった。
その頃のイ・サンは知識への渇望に心を動かされており、深夜まで書物を開いていることがとても多かった。そんな夜遅く、イ・サンがロウソクの灯りの下で熱心に書物を読んでいると、彼のそばで忠誠を誓った内侍(ネシ/王族に仕える側近)が一時的に彼の元を離れていた。つまり、部屋にいたのはイ・サンだけだったのだ。
そのときであった。不意に、王宮の回廊から瓦を踏みしめる足音が響き渡った。イ・サンはその音に敏感に耳を傾けたが、間違いなくそれは人の足音であった。
「不埒な者が王宮へと侵入したのか?」
イ・サンは即座にその場にいる護衛や内侍を召集し、「何者か不審な者の足音が聞こえる。早急に原因を突き止めよ」と命じた。調査の結果、瓦や土の上にはっきりとした足跡が確認され、不審者の侵入の痕跡が明らかであった。
焦ったイ・サンは、信頼厚い側近である承旨(スンジ/国王の秘書)を呼び、明確に語りかけた。
「これは国を揺るがす陰謀者たちの悪事だ。侵入者がまだ王宮内に潜んでいるかもしれない。宮中を隅から隅まで調べ上げよう」
イ・サンはそう命じた。
こうして、宮中に配置されている兵士たちが動員されて捜索が開始された。しかしながら、夜の闇があまりに深く、不審者を発見することはできなかった。
以上が実際の『朝鮮王朝実録』の記述であった。ドラマ『イ・サン』ではイ・サンが老論派の陰謀で襲われるシーンが何度も登場しているが、それはフィクションだけの出来事ではなかった。実際に、国王でありながら命を狙われていたのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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